日本が「パレスチナを置き去りにしていない」というメッセージを出すことは重要 上川外務大臣が「パレスチナ支援」表明
「中国に対抗するため、アメリカの限られたリソースをアジアに集中投入するべきだ」という意見も
飯田)中東が混乱すれば得をする国として、イランという存在が見えてきます。いろいろな形で反政府組織などを支援していますよね。 細谷)かつては国際社会が結束していたからこそ、イランあるいは北朝鮮に対する制裁決議ができたわけです。言い換えると、国際社会が分裂すればするほど、イランや北朝鮮への制裁は難しくなる。その結果、外交が活発化し、北朝鮮とイランが率先してロシアに兵器や弾薬を提供する国になっています。国際秩序がますます分裂し、法の支配が崩れてきている1つの兆候だと思います。 飯田)中東が混乱し、ウクライナ情勢もあり、アメリカは3正面を強いられる状況になります。東アジアで暮らす身としては、ここを安定させるのが日本の国益にもつながるのですか? 細谷)日本もそうですが、アメリカのなかでは「中国に対抗するため、アメリカの限られたリソースをアジアに集中投入するべきだ」という意見もあるのです。一方、アメリカが世界のリーダーとしての責任を果たさず、ウクライナや中東の問題を放置すれば、世界における法の支配が崩れ、結局は「アジアでも中国がより積極的に軍事行動を起こしやすくなる」という議論があります。どちらも一理あるので、アメリカ国内でも意見が分かれている状況だと思います。
政治的に二極化し、アメリカ政治の見通しが悪くなっている
飯田)アメリカは大統領選を控えています。どちらの政権になるかによって政策は変わるのでしょうか? 細谷)共和党・民主党とも内部が分裂しており、世代的にもかなり分かれています。特に民主党の若い人たちはパレスチナ寄りの意見が強い。また、若い人ほど国際社会でアメリカがグローバルなリーダーシップを果たすことに対し、やや躊躇しています。80年代のレーガン大統領の時代は、「偉大なアメリカ」として世界でリーダーシップを発揮し、冷戦を終わらせたと言われていました。アメリカの年配世代と若いZ世代では、世界の見え方が違うのかも知れないですね。 飯田)アメリカも世界のなかの一国であり、「普通の国に戻るのだ」という感じになっているのでしょうか? 細谷)そういう考え方が底流にあるので、民主党・共和党ともに党内で分裂があり、さらに世代で分裂し、経済格差も広がっている。政治的に二極化しているので、アメリカ政治の見通しがわかりにくくなっているのかも知れません。