『コタツがない家』安田顕と吉岡秀隆の息がぴったりな演技 悠作が選んだ漫画家としての道
ドラマ『コタツがない家』(日本テレビ系)第8話には、初出演の人物が2人登場する。それは、事前に告知があった清美(高橋惠子)の友人・倉谷仁(小堺一機)、そしてサプライズでの登場となった悠作(吉岡秀隆)の友人・飾磨哲央(安田顕)である。エンディングに“特別出演”として「安田顕」のクレジットが追加されている、まるでウェディングプランナーのような徹底ぶりだ。 【写真】悠作(吉岡秀隆)とお酒を飲ぬ哲央(安田顕) 改めて、本作は生田斗真が主演を務めた2019年放送のドラマ『俺の話は長い』(日本テレビ系)のスタッフ陣が再集結した作品。『俺の話は長い』にも出演していた小池が今回、プロデューサーの櫨山裕子の強い後押しもあり、民放ゴールデンプライム帯の連続ドラマで初の主演を張っているが、小池以外に続投されているのは達男(小林薫)のアルバイト仲間・熊沢を演じている西堀亮ぐらいであった中で、満を持して『俺の話は長い』で小池と夫婦役を演じていた安田が出演を果たしたというわけだ。 今期では『セクシー田中さん』(日本テレビ系)にも出演中の安田は、多忙のスケジュールを塗っての、という意味も込めての“特別出演”であることは想像に難くない。どこからどう見ても安田顕の仏頂面である悠作のイラストに「え?」と驚かされ、引きのリビングの画にてそれが確信となる。妻の尻に敷かれている腰の低いダメ夫の『俺の話は長い』、人ったらしのイケメンマスター『セクシー田中さん』を演じているそれぞれの役も安田であることに変わりはないが、缶ビールを片手に庶民的な家庭に囲まれ悠作と思い出話に花を咲かせる今作での哲央は、よりパブリックイメージに近い安田の芝居であるように感じる。 残念ながら小池と安田の姿が並ぶことはなかったが、意外にも吉岡秀隆と安田はこれが初共演(!)。小池がコメントしているように息ぴったりの演技で、2人で仲良くアゴを尖らせてアントニオ猪木のモノマネをしながらプロレスごっこをしているシーンは、本当の親友のように思えてくる。 第8話のタイトルは「シン・嫉妬怪獣」。突如、元妻の清美の前に現れた倉谷という存在に対して、ライバル心を剥き出しにし未練タラタラの達男を指した言葉。その奥には、なんでも他人のせいにし、自分のエゴを押し付ける昔から変わらない達男の性格があった。倉谷が現れたことにより、自身を俯瞰し、清美を失ったことを痛感する達男。宇宙(家出)に放り出された怪獣(ダメ男)を地球(家)に引き戻すのが万里江(小池栄子)の務めであり、キッチンカーの和恵(野々村友紀子)の「ほったらかし大作戦」が功を奏し、悠作が宇宙から帰還。驚くことに悠作は新作の漫画を描き進めていた。 万里江は嬉しそうに悠作へとどんな話なのかを尋ねる。それは、悠作が万里江と離婚して家を出ていくまでの話。自分の不幸を切り売りして、家族や編集者の土門(北村一輝)、友人であることが自慢だと話していた哲央が幸せになる道を悠作は選ぼうとしていた。その漫画のタイトルは『コタツがない家』。
渡辺彰浩