六甲山上を彩る「神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond」開催中
神戸・六甲山で現代アート作品が楽しめる芸術祭『神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond』が8月24日(土)に開幕し、公募と招待アーティストによる絵画や彫刻など幅広いジャンルの作品が、六甲山上の9会場で展開されている。 全ての写真はこちら 15回目の開催となる今回は過去最多となる61組のアーティストが参加、国内外で活動するアーティストのさまざまな視点で作られた作品が楽しめる。また、六甲山の豊かな自然の中で山歩きと作品鑑賞が同時に楽しめるトレイルエリアや昨年新設されたROKKO森の音ミュージアムの野外ゾーンが拡充されるなど、さらに充実した内容となっている。 公募大賞グランプリに選ばれたのは、トレイルエリア(みよし観音)に展示されている水田 雅也の『イノシシ村のお願い』。かつて六甲山には野生のイノシシに餌を与えて交流を楽しんでいた「イノシシ村」と呼ばれる地域があり人間との距離も近かったが、今ではイノシシは害獣とみなされるようになり注意書きの看板が増えるなどイノシシとの関係も変化。人や集団、時代などに対するさまざまな「お願い」を、ユーモアを交えた看板や映像、音声で展示。野生のイノシシをきっかけに自然と人間との関係を考えさせられるような奥深い作品となっている。 同じくトレイルエリア(みよし観音)に展示されている近藤 尚の『わたしのお墓』は公募大賞準グランプリを受賞。さまざまな形の小さな家を墓にみたて、どこからか聞こえるAMラジオのノイズや蚊取り線香の香りを感じさせながら、お墓に囲まれた鑑賞者を純粋な精神世界へいざなう作品となっている。 六甲高山植物園にあるログハウス風の土産店「ショップ アルピコラ」の壁面に展示されている田中 優菜の『雉は鳴かずにいられない』は公募大賞奨励賞を受賞。染織造形作家の田中 優菜が六甲山に数多く生息する雉をモチーフに伝統工芸技法の「綴織」で表現した作品。向かい合う2羽の雉の胸周りは、それぞれ六甲山から見た有馬方面と三宮方面の景色になっている。さまざまな素材が使われているカラフルな作品で、手で触りながらその感覚を感じることもできる。 ROKKO森の音ミュージアム野外ゾーンに展示されている高橋 瑠璃(※高ははしごだか)の『2人の秘密の間を過ごす』は、「花と目が合うから怖い」と言っていた友人の言葉をヒントに得て、六甲山で見て感動した紫陽花をテーマに、向かい合う大きな人面岩や地面に設置した数多い御影石に表現。周辺の環境と相まってストーンパワーを感じさせる作品になっている。 ほかにも、日本でも根強い人気のある元K-POPアーティスト、ウ・ヒョンミンの『山の音』(トレイルエリア/ブナの小道)や、7年前よりアート活動をしている女優のんの『のんRibbon Art 昔といまを結ぶちょうちょ』(ROKKO 森の音ミュージアム/館内)など話題の作品をはじめ、各会場ではインパクトのある作品が六甲山の自然と調和しながら展示されている。 会場が幅広いため一日では全作品の鑑賞はとうてい厳しいので、9会場をゆっくり周遊・鑑賞するなら、時期をずらしながら数回に分けて訪れるのがおすすめ。また9月21日(土)からは、土日祝限定で『ひかりの森~夜の芸術散歩~』がROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園で開催され、幻想的な六甲山上の夜も楽しめる。 同芸術祭は11月24日(日)まで。周遊には、会期中に有料会場全てに入れるお得な「鑑賞パスポート」の購入がおすすめ。チケットは発売中。 取材・文・撮影/滝野利喜雄