【ラグビー】言い訳不要のラストシーズン。金昂平[明大4年/FB]
いまになって下級生だった頃を振り返ると、「いいなあ」と思える先輩は皆、パフォーマンスの土台が堅固だった。 「たとえば、江藤良さん(現・横浜E)。僕が入部したときの4年生で、その年に初めて対抗戦に出るんですけど、ミスをした印象がほとんどない。そのまま選手権の決勝まですべての試合に先発しました。齊藤誉哉さん(現・埼玉WK)もそうです。1年生のときはジュニアの試合で一緒でした。そこで感じたのは、チームや後輩への声かけ、堅実なプレーで後輩を引っ張る姿。本当に頼りになる先輩の意味がわかりました。あとは(廣瀬)雄也さん(現・S東京ベイ)。みんなにあれだけ信頼されるキャプテンだったのは、結局そういうところなのかなあ、と」 過去3シーズン、いつまでも変わろうとしない自分を見捨てなかったコーチにも恩返しをしたい、と考えている。 「ボールのリリースが適当で、止められたらそこで終わり。ダメなプレーを繰り返しても、滝澤(佳之)さんはずっとアドバイスしてくれました。熱さが伝わってきて、それには応えないといけない。3年間、言うことを聞かないまま来たのに、それでも言い続けてくれたので」 BK全体の力量、レベルには自信がある。「今季も強い」と矜持に満ちた口調で話す。 「みんな速くて、うまい。正直、ランやパスは誰が出ても一緒。遜色ないです」 では、どこで違いを生み出し、ポジションを守り続けるのか。 「いいなと思った先輩と同じように、頼られる選手にならないといけない。チームの雰囲気が悪いときに、いちばん後ろの立ち位置から引っ張る力が必要だと思います。明治は悪いプレーが続いたり、相手にポンポンと(トライを)取られると、落ち込んでしまう傾向がある。僕はそういうのをまったく気にしないので、(チームが)沈んでいるときに引き上げられるような存在でいたい」 いよいよ紫紺を着られる最後のシーズンが始まる。自覚と責任感が以前とはまるで違う。「この気持ちを最初から持っとけよ、と過去の自分に言いたいくらい」と自嘲気味に笑ったあと、真剣な表情で言った。 「3年間、言い訳はしつくしたので」 最上級生になって約半年が過ぎた。取材をおこなったのは7月末。当然、その時点で寝坊による早朝練習への遅刻は一度もない。 (文:三谷 悠)