『マウンテンドクター』MMTが波乱の船出 “歩”杉野遥亮はチームをどうまとめるか
繰り返される「なぜ山に登るのか」という問いかけ
第2話では、野口七海(西原亜希)、大地(横山歩)親子にスポットライトが当てられた。女手ひとつで自分を育てた七海に、亡き夫との思い出の場所である穂高連峰の涸沢カールを見せてあげたい。母親思いの大地は、お金がないことを心配してスニーカーで山に登り、足を滑らせて崖下に落ちた七海を助けようとするが……。 限られた設備しかない山の上で、いかに目の前の命を救うか。山ではシビアな判断が求められ、ハードルは平地の何倍も高くなる。山小屋で開腹手術をするため、夜間帯に資材を運んだ玲(宮澤エマ)は「もう山で命を失いたくない」と言ってライト一つで真っ暗な山道を行くのだが、「山に復讐する」と言う江森と同様、過去につらい経験をしていることが察せられた。 結果的に歩は親子二人の命を救うことができた。ただし、江森の言葉は厳しかった。病院に搬送された大地は骨折に加えてチアノーゼも併発しており、聴診器をあてた江森が高地肺水腫の診断を下さなければ大地の命も危うかった。「山岳医になったからと言って過信するなよ。今のお前はただの山好きの医者だ」という警告は、犠牲者を出さないためである。他方で、江森には何を考えているかわからない面もある。ラストで遭難事故を目撃した子どもに口止めする姿には、いわくありげな空気が漂っていた。 山好きとして見逃せないのは、通りがかりの登山者が山荘に連絡して救助を求めたことだ。遭難直後に適切な対応を取ることで、被害を最小限にとどめることができる。登山が自己責任であることはたしかだが、袖と袖が触れ合うような登山道で一人ひとりの善意が命をつないでいることを痛感した。
石河コウヘイ