「頑張れって言わないで!」水泳・大橋悠依が語る“コーチとの衝突”…感情を失った金メダリストはどうやって“燃え尽き”を乗り越えたのか?
9月、競泳女子個人メドレーの第一人者・大橋悠依(29歳)が現役引退を発表した。2021年東京五輪では400mと200mの個人メドレーで、夏季五輪日本女子史上初の2冠を達成。しかし、コロナ禍で開催された異例の祭典では心残りがあった。両親や家族にレースを見せたい――その思いで現役続行を決断した大橋だったが、パリ五輪までの道のりは実に険しいものだった。【NumberWebインタビュー全2回の2回目/前編から続く】 【画像】“天才少女”と騒がれた中学時代「いまと全然違う?」金メダリスト大橋悠依の秘蔵写真…“同級生”桐生祥秀と仲良しキャンパスライフ、鍛え抜かれた美ボディまで全部見る(40枚超) 「両親や家族にレースを見せることができなかったので、会場で見てもらってから辞めたいなという思いが大きかった」 気持ちを新たにスタートを切った大橋は、200mでは2017年、400mでは2018年に記録した自己ベストを更新することを目指し、パリ五輪へ向けて再び歩みを始めた。 しかし、東京からパリまでの3年間は、重圧との戦いでもあった。 「どれだけ小さなレースでも取材していただく機会が増えて、レースで試したいなと思っていることがあっても試しにくかったですね。国内では負けられないという気持ちがあったので」 「引退しておけばよかった」という考えが頭をよぎったことは一度や二度ではない。悩みがあり、知人に相談すれば、「それは金メダリストにしか分からないことだよね」という言葉をかけられることもあった。 金メダリストの孤独――それに打ち勝つために、大橋は苦悩し、もがき、努力を重ねた。 東京五輪から約7カ月が過ぎた国際大会日本代表選手選考会。大橋は200m個人メドレーで2位、400mは3位に留まった。若手の台頭を背景にパフォーマンスはやや精彩を欠いていた。 実はこの世界選手権は当初、2021年夏に福岡で開催される予定だった。しかし、コロナ禍により東京五輪と共に延期。東京五輪が終わった後、急遽、2022年6月にブタペスト(ハンガリー)で世界選手権が開催されることが決定した。大橋ら選手たちは対応に迫られることになった。 「短い時間の中でものすごいスピードでいろいろなことが決まっていって……。そこに気持ちが追いついていかなかったですね。もちろん、代表に選ばれたからには出場するレースに向けてどうにかして気持ちを高めようとしていたんですが、集中できなかったり。いざ出場しても、エネルギーの消耗が半端なくて、ものすごい疲労を感じていました。結果、体調を崩すこともありました」 結局、2022年の世界選手権では200mで13位、400mで5位という結果に終わった。 「その当時は自分も代表なのに、“みんなすごいな。頑張ってるな”と、どこか俯瞰して見ているようなところがあって、レースへのエネルギーがまったく沸き上がってきませんでした。まるで感情を失っているかのように。日々を淡々と過ごしている、ただそれだけで」 いつもなら世界選手権のような大舞台の直前になると自然と上がるモチベーションも、「ワクワクした気持ちも、楽しむ気持ちも全くありませんでした」と振り返る。
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