《記者コラム》官民挙げてブラジル急接近の韓国=K-POPスターを前面に出して
K-POPメガスターを総動員して魅力伝える
1月4日付のフォーブス《韓国がK-POPファン向けに特別ビザを発行》(4)という記事を見つけ、これらの動きは〝政策〟として官民挙げて総合的に取り組まれているのだと分かった。 100億ドル規模のK-POP産業は韓国経済にとって非常に重要だ。韓国にとって世界戦略の要であり、K-POPやKドラマのファンの熱意を育て、それをビジネスに活用することは経済的に非常に合理性がある。世界進出マーケティング戦略の成功事例第1弾のボーイズグループBTSが昨年、一時活動休止を発表し、メンバーがソロ活動を模索したことで同国のGDPが打撃を受けたほどだ。つまり、国を挙げて取り組む大事業がK-POP振興だ。 韓国政府によるユーチューブ英語チャンネル「Imagine Your Korea」(5)は計36億回も動画が再生されている。中でもNetflix配信の世界的ヒット韓国ドラマ「イカゲーム」の俳優イ・ジョンジェが出演する「Desafio Korea: Hello Future」(6)というユーチューブ動画は、2023年6月の公開からわずか半年間で1億4千万回の再生回数を記録した。若者がソウルの主要観光地をバイクで回る内容で、Kドラマで頻繁に見られる美しい光景がわずか2分の間にこれでもかと流れる。そのほか、BTSやBlackpinkなどのメガスターが韓国の様々な魅力を紹介している。
K-POPを前面に立てて世界から観光客呼ぶ
2023年に韓国文化体育観光部が公開した「事業計画」によれば、芸術は「次世代に向けてのKカルチャー(韓国文化)のけん引役」であり、6項目の重要戦略の一つだ。より多くの外国人を国内に呼び込むため、若手のアーティストや作家たちを支援することに注力するとしている。 韓国政府は今年から「Kカルチャー」を愛し、韓国でパフォーミングアーツなどを学ぶことを希望する外国人を対象とする「Kカルチャー研修ビザ」(仮称)の発給を開始する予定。この新ビザを取得した人には、最長2年間の滞在が許可される。申請要件は今年後半までに発表される。 韓国文化体育観光部の政策実施計画(7)によれば、「Kカルチャーで韓国を世界有数の文化大国にし、文化交流を通じて国民の幸福を育む」という大方針のもと、(1)ゲーム、動画、ウェブ漫画などキーコンテンツを集中的に育成、(2)1兆7400億ウォン(1978億円相当)規模の政策金融を投入、(3)海外ビジネスセンター(25カ所)を通じてコンテンツの海外進出を支援―とある。 1月19日付Kpopalerts記事《韓国、世界25都市で観光マーケテイングキャンペーンを開始》(8)によれば、韓国文化体育観光部は、23年には欧米諸国から約262万人の旅行者が韓国を訪れた。長距離を移動して韓国を訪れるこれらの旅行者は、滞在時間が長く、複数の都市を巡る傾向があり、日本との共同パッケージのプログラムを発表する予定。JTB発表で2024年の訪日外国人観光客数予想3310万人(23年比131%)という大波にのり、その一部を韓国に引き込む上手なコバンザメ戦略だ。 そこには《韓国観光公社は、海外事務所が設置されていないが訪韓観光の可能性を秘めた10か国に観光振興センターを開設することを計画している。スウェーデン、ウズベキスタン、ブラジル、サウジアラビアなどが挙げられる》とあり、強化拠点にブラジルも入っている。 まさに『イ・ドゥナ』は2022年年末から撮影され、昨年10月に公開された。そこで描かれているのは憧れのK-popアイドルの私生活を軸に、外国人若者が憧れそうな韓国での大学生活、恋愛事情、田舎の観光地の風情、多彩な韓国料理の数々が毎回美しいカットで挟み込まれている。 このドラマに触発されてイ・ドゥナなどのアイドルに憧れた外国人の若者が、Kカルチャービザを取得して「韓国で生活してみたい」と思うこと間違いなしだ。その中の優秀な人材は韓国国内のアイドル養成プログラムにスカウトされ、将来のK-POPを支える次世代アイドルに育成されるかもしれない。