やじ飛ぶ集会、“片思い”のため書き…学歴差別発言の市長、孤立深まり「四面楚歌」に 与野党、市議会、恩師からも資質疑う声
新潟県上越市の中川幹太市長(49)の任期が残り1年を切った。副市長4人制導入など主要な公約は実現せずに3年が経過。この間失言を繰り返し、2024年6月の高卒者への不適切発言を巡り、市議から不信任決議案を提出された。上越市政始まって以来の事態に至り、議会との関係はさらに悪化。新潟県第3の都市のリーダーとして、資質を問う声が上がる。 【一覧】中川幹太市長の不適切発言 「中川やめろー」。衆院選期間中の10月16日、上越市で開かれた自民党候補の集会で、登壇した中川市長にやじが飛んだ。動揺したのか、候補の名前を言いよどむと、再び「やめろー」の声が響いた。 3年前の市長選で一部野党勢力からも支持を受けた市長は、自民や経済界などが推す候補を破り初当選。現職首長への異例のやじは対立した勢力とのしこりが今も解消されていないと思わせる一幕だった。 衆院新潟5区は県内で唯一、与野党一騎打ちの構図となった。市長はどちらの候補も支援しない考えを示していたが、自民陣営から来援の要請があると、それに応じてマイクを握った。 市長は選挙後の会見で「特定の候補に特に力を入れることはないという意味だった」と説明。関係者によると、市長側から野党陣営にも応援に行く旨の相談があったが、陣営側は応じなかった。野党陣営幹部は言う。「やじを受けるような人に来てもらっても困る」 市長は「2人とも当選してほしい」との思いを示すため、両陣営へため書きを届けた。だが、関係者によると、27日の投開票日当日、どちらの陣営の開票見守り会場や、事務所にも張られることはなかったといい、市長の“片思い”に終わった。 与野党との溝が浮き彫りになった市長。市議会にも辞職勧告を出され、関係構築の兆しは一向に見えない。高卒者に対する不適切発言などを受け、支持者も離れ始めた。求心力が急速に低下している。 8月下旬、不適切発言で 上越市政が混乱する中、市民有志が300人規模の「市政立て直し緊急市民集会」を開いた。市長と対立する市議らに混じり、市長が「恩師」と仰ぐ人物も壇上に並んだ。市長が所属していたNPO法人の和瀬田仙二・元理事長だ。 和瀬田氏は約20年前からの付き合い。発言を問題視した和瀬田氏は集会で「彼を大事に育て、更生してほしいと考えていたが、考えが甘かった。彼は辞めるべきだ。新しい人から市政を立て直してほしい」と強調。会場からは大きな拍手が巻き起こった。 和瀬田氏の行動について、市長は会見で「非常に近い方。衝撃はあった」と驚きを隠さなかった。 「政治的に孤立しているのでは」。市長を取り巻く厳しい状況から、庁内からは、そう懸念する声も漏れてくる。市長は来年再選を目指すのか取材で問われても「後援会とも話していないので判断できる状況にない」と述べるにとどまる。 しかし、上越政界では「出馬しないのであれば、辞職勧告に応じてとっくに辞めている」(野党系県議)などと再選出馬を確実視する見方が大勢を占める。 一方、後援会活動は事実上休止している。大規模な集会を今秋に開く計画があったが、不適切発言を受け、取りやめた。大規模集会は当選翌年の2022年以来、開いていない。 市長選に対抗馬として名乗りを上げた人はいないが、政財界には中川市政への不満がたまっている。今後、擁立に向けた動きが活発化するのは必至だ。