『虎に翼』寅子が“昭和のお父さん”状態に 朝ドラヒロインには“反感を買う”時期が不可欠?
『なつぞら』雪次郎(山田裕貴)の夢に反対したなつ(広瀬すず)
『なつぞら』は、戦災孤児だったヒロイン・なつ(広瀬すず)が、北海道・十勝の広大な大自然の中、たくましく成長し、上京後はアニメーターを目指すようになる物語。なつは画力は足らないものの、「東洋動画」作画課の課長・仲(井浦新)の強い推薦とフォローによって、アニメーターとして成長していく。困難に負けないヒロイン像を描くはずが、とんとん拍子に出世していくように見え、視聴者からは「何でなつだけが無条件で贔屓されるのか分からない」とか、「こんな女性とは同じ職場で働きたくない」といった批判の声が上がった。 高校のクラスメイトだった雪次郎(山田裕貴)が、菓子職人の修業をやめて、役者になりたいと言った際には、なつは猛反対し、「いいの? 本当に家族を裏切って」と、雪次郎を説得しようとしていたが、なつ自身も一度は手伝うことを決めていた牧場を出て、夢を追いかけるために上京したので、「自分はやりたいことを好きにやっているのに、人には反対するって何なの?」「自分が気に入らないから、反対してるようにしか見えない」など、視聴者からやや嫌われ気味のヒロインとなってしまった。 全体的に見れば、いいところのたくさんある朝ドラヒロインたち。そんなヒロインが持つ負の側面も描くことで、視聴者はより彼女たちを欠点のある1人の人間としてリアルに感じることができるようになる。 『舞いあがれ!』や『ちむどんどん』を観ていて感じるのは、人間誰しも調子に乗ってしまう時期があるということ。そこから視野を広げ、周囲にも気を配れるようになるかが成長の分かれ目だ。 『虎に翼』の寅子も、花江の不満や優未の本心にしっかりと耳を傾け、自分が自信過剰気味だとすぐに気づいて、態度を改めるようになると信じたい。そうすれば、きっと以前のような、いや、むしろ前以上に視聴者から愛される寅子になる日は近いはずだ。
清水久美子