春再び 支える人/下 「ばあば」平家佐和子さん 信頼厚い選手の「女神」 20年前からグラウンド通い /愛媛
<第91回選抜高校野球 センバツ高校野球> 「もっと声出して」「まだまだやれるでしょ!」。グラウンドで練習する選手たちに威勢の良い声が飛ぶ。松山聖陵の近くに住む平家佐和子さんの声だ。「野球部の子たちはみんな息子のようなもの」。選手たちからは親しみを込めて「ばあば」と呼ばれ、信頼を集める。高松亨有(りょう)投手(1年)は「聖陵の女神。なんでも相談できる人」と笑顔で話す。 松山市で暮らし始めて約40年。高校野球が昔から好きで、当時松山市堀之内の城山公園にあった松山市営球場に足しげく通っていたという。同校と接点ができたのは約20年前。夕方の散歩コースで練習している球児たちの姿にふと目が留まった。それからはほぼ毎日練習を見るように。当時の監督からも声を掛けられ、バックネット裏から白球を追う姿を見つめてきた。選手たちを上回るような元気のあるかけ声は70代とは思えない。グラウンド通いは「私の元気の源」と笑う。 約10年前からは当時の校長から頼まれ、同校の学校評議員を務めている。「大切な子どもを預かっている分、一人一人とのコミュニケーションを大切にしないと」。グラウンドだけでなく選手たちが下宿する宿舎にも時折顔を見せる。昨秋の四国大会では野球部員たちが乗るバスに同乗し、緊張感を共にした。 練習でも選手たちの動きを誰よりも細かく見ており、心の支えにもなっている。小川諒大捕手(1年)は「打撃練習でいつもより良い打球を打つとすかさず『ナイスプレー』と褒めてもらえる」とうれしそうに話す。 甲子園にも応援に行く予定だ。「今までの練習の成果を発揮して、一球一球大切に甲子園に臨んでほしい」と息子たちの活躍に胸を膨らませる。【遠藤龍】