阪神大震災、直後の被災地見つめて…世界100か国以上で撮影した写真家が1月に写真展
神戸市東灘区在住の写真家、長島義明さん(82)が来年1月6~15日、阪神大震災の被災地を記録した写真展を尼崎市東難波町の画廊喫茶「蜜」で開く。世界100か国以上を旅して人々や風景を撮影してきた。「阪神大震災を撮ることはカメラマンとして大切な仕事だった。決定的な瞬間はないが、一枚一枚からメッセージを感じ取ってほしい」と語る。(高部真一) 【写真】崩れた銀行の建物(神戸市兵庫区で) 長島さんは1963年に日本写真専門学校を卒業後、20歳代の頃から世界を巡った。77年にはアフガニスタンでバーミヤンの仏教遺跡などを撮影。キューバのフィデル・カストロ国家評議会議長(当時)と面会し、撮影に成功するなど国内外で活躍した。
阪神大震災の時には、大阪府門真市に住んでいた。大きな揺れが起きると、カメラ1台とフィルム2本を手に取った。大阪市内までは電車で、それからは徒歩で被災地に向かった。 しばらくすると、倒壊したビルや横倒しになった高速道路が目に飛び込んできた。焼け跡でぼう然と立ち尽くす人たち、学校に並ぶひつぎ、戸板で運び出される遺体……。「悪夢の連続のようだ」と感じながらも、「記録してなんぼや。写真として残せば何かの役に立つ」とシャッターを切った。 約10日間、神戸、芦屋、西宮をひたすら歩いた。焼け跡で「街がこんな姿になったのは空襲以来」と嘆く老夫婦、破裂した水道管の水を使って洗濯をする女性、自衛隊や機動隊による救出作業などを撮った。倒壊した家から息子のへその緒を見つけ、家族が一瞬だけ和んだ様子も捉えている。
個人でチャーターした小型機に乗り、上空からも撮影した。写真は約3000枚に及び、震災の現実を伝えるために国内各地のほか、米国のニューヨークやイランで写真展を開いた。 今回は「あれから30年 阪神大震災」と題した。会場が喫茶店でスペースは限られているが、できるだけ多くの作品を展示するつもりだ。長島さんは「被災した人は改めて震災を見つめ直す機会に、若い世代には30年前の街で起きたことを知るきっかけにしてほしい」と話す。 「蜜」(06・6481・3629)は午前7時~午後5時(土曜と祝日は午前のみ)。日曜休み。