お笑い芸人+アイドル…ジャンルを超えた"対バン"イベントの魅力を人気「地下アイドル」に聞く
室井さんが主催するライブでお笑い芸人に出演してもらうことにはこんな理由もある。 出演するアーティストが交代する際に使用する機材などのセッティング交換に要する、「転換」と呼ばれる時間。 「多くはその時間は、DJさんがかける音楽を楽しんだりドリンクやフードを楽しむ時間になっていますが、その時間を使ってネタをやっていただくことで、ステージが空白になる時間がなくなる、別の楽しみ方ができるんじゃないかと思ったんです」(室井ゆうさん) “呼ぶ側”として配慮することは、あるだろうか。 「共通する部分があるとはいえ、違う種類のエンタメでもあります。 ぶっちゃけ、お笑いだけ、バンドだけ、アイドルだけでもライブは成立するじゃないですか。どちらかがアウェイにならないように、見なくてもいい時間だと思われないように、そのバランスや相性はすごく考えます。 単独ジャンルのライブでは生まれない楽しさ、相乗効果が生み出せて、ジャンルレスで『楽しい』という気持ちにさせたいなという思い、それは小藪さんがやられているような規模の大きなものとも共通する楽しさじゃないかなという気がします」 ◆『8時だョ!全員集合』『SMAP×SMAP』の時代から… 昭和のテレビの世界では、『シャボン玉ホリデー』や『8時だョ!全員集合』、『ヤンヤン歌うスタジオ』のように、コーナーがシームレスにつながったり、それこそ歌手がコントに出演するような人気番組が多数存在した。 平成でも、毎週SMAPのコントと歌が楽しめる構成となっていた『SMAP×SMAP』など、笑いと歌を一緒に楽しむ土壌はもともと存在した。音楽などを楽しむ場の主流がテレビからライブ会場へと移行した流れが、KOYABU SONICのようなフェスやイベントという場にもみられるようになった結果なのかもしれない。 それこそ小藪自身のフェス主催や川谷絵音とのバンド活動も、音楽好きが高じた結果といえるが、ロック好き、アイドル好きなどを公言する芸人、そして室井さんのようにお笑い好きを公言するアイドルなど、趣味がジャンルを超えて武器になる時代になってきているという背景もある。 「パーパーのほしのディスコさんが『歌ってみた』動画で歌うま芸人として注目されたり、マユリカの阪本さんやロングコートダディの堂前さんといった芸人さんたちがジュースごくごく倶楽部というバンドを結成してライブをやったりアルバムを出したり。アイドルのようにうちわで応援されたりして『ワーキャー』系と呼ばれたりする芸人さんたちもいたり。 “楽しい“以外の近い部分もたくさんある気がします。好きなものを発信したり、実際にお呼びすることで、好きな人の好きなものだからという思いで見てくれる人もいたり、単純に興味はあっても新たに踏み込むきっかけがわからなかったり、そういった意味でも、こういうイベントで今まで自分からは触れてこなかったり、知らなかった新しい『好き』を見つけてもらう“きっかけ”になれたら嬉しいなといつも考えています」 前出のゆらぴこさんは、10年の活動を通じて感じる変化を語る。 「女性アイドルが異性のバンドやお笑い芸人さんと共演すること、SNSなどへの投稿のために一緒に写真を撮ることなどを嫌がるファンは、どちらの側にもいます。私自身も何度も言われたことがあります。多様性の時代になるとともに、最近はそういう声が少なくなった印象があります。 ジャンルや性別なども関係なく、『楽しみたい』という気持ちが一番優先されるようになってきたのかなということが、10年やってきて感じる変化です」(ゆらぴこさん) お笑いと音楽の世界は、ますますなかよしになりそうだ。 取材・文:太田サトル ライター・編集・インタビュアー。学生時代よりライター活動を開始、現在はウェブや雑誌などで主にエンタメ系記事やインタビューなどを執筆。
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