熊本城の復旧過程「今こそ見たい」 宇土櫓と監物櫓、特別公開が好評 来場者2万人
熊本地震からの復旧が進む熊本城(熊本市中央区)は、被害状況や工事の様子、発掘調査の成果など復旧過程を積極的に公開している。復旧への理解を促進し、城の本質的価値や魅力を発信し続けることで、有料入園者数を増やすことなどが狙いだ。大型連休中に実施した二つの櫓[やぐら]の特別公開には大勢の人が詰めかけ、県民や観光客から好評を博している。 大型連休終盤の5日、熊本城は周辺の駐車場が満車状態となり、国内外の観光客でにぎわっていた。この日は宇土櫓(国重要文化財)の工事用素屋根と、復旧を終えた監物櫓(同)の内部を期間限定で公開する日とあって、両櫓にも多くの人が訪れた。 両櫓を見学した中村聖雅さん(66)=美里町=は「監物櫓は梁[はり]や柱から歴史が感じられ、新しい耐震補強も間近に見られて良かった。熊本城の復旧過程は今しか見ることができない貴重な機会。わが子の成長を見守るように今後も見ていきたい」と笑顔で話した。
熊本市熊本城総合事務所によると、本年度に特別公開した宇土櫓素屋根(4日間)と監物櫓(3日間)には計約2万人が来場。両櫓には担当職員を毎日配置し、来場者からの質問に答えるなど対応にあたった。同事務所は「刻一刻と姿が変わっていく熊本城の現状を多くの人に知ってもらえた」と手応えを口にする。 復旧過程の公開は、地震直後の2016年7月にビジョンを示し、同年12月策定の復旧基本方針に盛り込んだ。「熊本のシンボルである熊本城の復旧過程を市民・県民に見ていただき、できるだけ早くにぎわいを取り戻し、観光資源として早期再生を図る」という目的で始まり、特別見学通路の設置や発掘調査現場の見学会などを実施してきた。 熊本地震で国重文の建造物13棟全てが被災し、多くの石垣が崩落したため観覧エリアは限定されている。有料入園者数は22年度約100万人、23年度約135万人と増加傾向だが、目標とする地震前3年間の平均約166万人には及ばず、入園料収入と維持管理費(復旧事業費を除く)との収支は赤字という。