【菊花賞】アーバンシック、ラスト1冠へ全集中 ソラ改善、精神面成長した今なら初三千こなせる
<追い切りの番人> 菊花賞(G1、芝3000メートル、20日=京都)の最終追い切りが16日、東西トレセンで行われた。出走馬の調教を深掘りする「追い切りの番人」では、東京の舟元祐二記者がアーバンシック(牡、武井)を取り上げる。春までは常に付きまとった懸念材料、1頭になった時の危うさが改善。ゴール後も集中して駆け抜けた姿に大きな成長を感じさせた。精神面の進境が全馬未知の3000メートル克服への鍵になるとみた。 ◇ ◇ ◇ ゴール後にさっそうと流していくアーバンシックの姿が、これまでとの違いを如実に物語っていた。 この日は美浦ウッドで外シホリーン(2歳1勝クラス)を2馬身半追いかけ、内カリーシ(3歳2勝クラス)を4馬身半後方に置いた3頭併せ。前を走る僚馬に早めに追いつくと、そのまま併せる形で集中力を持続させ、追いついてきた内の僚馬は直線半ばで置き去りにした。 ラスト1ハロンは11秒3。ゴール板をトップスピードで駆け抜けた後も集中したまま、1頭だけで1、2コーナーまで駆け抜けていった。以前は武井師が「抜け出すとぐわーっとなっていた」と言うくらい抜け出すとソラを使っていた(※)。そこが改善された。「精神面の成長が大きい。厩舎サイドとして見ているのがゴール後(の動き)で、今では危うさがなくなってきている」と進境を感じている。9月から調教に騎乗し、この日も手綱を取った石神深騎手(レースはルメール騎手)も「相手も動く馬だったので、その癖(ソラを使う)を直すのに良かった」と充実ぶりを伝えている。 春までは調教中に折り合いを欠いたり、ゴール後に集中が途切れたりと課題が多く、まさに粗削りの原石だった。重賞、G1を勝ちきれなかったのは、その危うさが、多かれ少なかれ影響している。結果的に勝利した前走セントライト記念の最終追い切り時でも、馬場入りを嫌がっていた。秋2戦目でそれらの改善はさらに1歩進んだ。元々、体を大きく使うフォームには迫力があった。今はそれに加えてやる気や集中力がみなぎっている。文句なしの稽古に映った。 原石に磨きがかかった。馬名「Urban Chic」が意味する通りに“洗練された”。自信を持って3000メートルに挑戦できる。「中身もできている。1度使って上積みもあるだろうし、クリストフなら引っ掛かることもないでしょうね」。以前は精神面の課題でスピード、スタミナと類いまれな才能を生かし切れなかった。今は違う。過酷な3000メートルをこなしてそれを証明する。【舟元祐二】 ※ソラを使う 馬の癖のひとつで、レースや調教時にふとしたことから馬の気が散り、走ることに集中できなくなった状態。