日本発だった「母子手帳」 死亡率低下に寄与、途上国で導入続々
アンドリアンサさんは帰国後に母子手帳の導入に注力されました。1994年ごろにパイロット版を作成したことを皮切りに、改訂を重ねながら徐々に全国に広めていったのです。その努力が実り、2006年以降はインドネシア国内全ての州で母子手帳が使われるようになっていったのです。 JICAは、2010年のインドネシア基本保健調査をもとに「(同国では)母子手帳使用者は非使用者に比べ、熟練介助者による出産、出産後48時間以内の新生児の体重測定実施、継続的ケアの利用、子どもの予防接種完了率などが高いことが明らかになっており、これらの向上を通じて母子の健康改善に寄与していると考えられる」としています。 今ではインドネシア政府が主体となって途上国から研修生を招き、母子手帳の導入、定着を後押ししています。2017年までにアジア・アフリカの14か国から135人を受け入れました。
15か国で全国的に普及、50か国で導入
世界に目を向けると、アジア・太平洋地域ではカンボジア、ブータン、ソロモン諸島など、中南米地域ではコロンビア、ドミニカなどの途上国で母子の健康が十分に保てていないのが現状です。特に、アフリカのサブサハラ地域(サハラ砂漠以南)では妊産婦死亡率が高く、2015年時点で平均死亡数は557人(10万出生中)に上ります。この数字は、日本(同5人)の100倍以上となります。
この課題を解決するため、インドネシアのように母子手帳を導入する国が続々と増えていきました。2019年現在、一部地域で採用している国、一時的に導入した国まで含めると50か国に上るといいます。また国の制度としてほぼ全国的に普及している国も、韓国、中国、フランス、パレスチナ、東ティモール、ケニア、セネガル、ブータンなど15か国あります。
字が読めなくても分かる
手帳が普及しても、識字率が低い国では親が読みこなせないのではないか――。素朴な疑問が浮かぶかもしれませんが、それぞれの国の状況に合わせた手帳の開発や、保健指導の実施などがなされているのです。