ホンダ ドリームCB750 FOURが、絶版旧車界の“横綱”であるワケとは?
希少な“砂型エンジン”とは?
カワニシ:1969年から1978年まで生産されたCB750は、生産年によりK0(ゼロ)からK8までの通称で呼ばれています。目の前にある個体は最初期型の1969年式K0、しかも“砂型エンジン”という希少車なんです。 押田:“砂型エンジン”って、なんですか? カワニシ:CB750発売当初、それほど多く売れるとは思っていなかったホンダは、設備投資が少なくて済み少量生産に向いた砂型鋳造(砂を固めて作った型に金属を流し込み固める製法)で、エンジンのクランクケースを作っていたんです。しかし予想以上の注文が殺到したため、急遽金型鋳造に変更し、量産体制を強いたんです。砂型で作られたのは7400台ほどと言われ、歴代CB750の中で最も希少なモデルとして珍重されています。 押田:わあ、面白いエピソードだなぁ。たしかにクランクケースの表面をよく見ると、ザラザラとした感じになっていますね。 カワニシ:金属表面のザラつきは砂型鋳造の欠点なのですが、見方を変えると、いかにも手作りという感じの温かみがあるんですよね。何れにしてもCB750で“砂型K0”と、言えば、そうとうな価値があるのは間違いありません。 押田:後ろから見ると、4本出しのマフラーも迫力がありますね。いい音がしそうだなあ。 カワニシ:並列4気筒エンジンであることを主張する4本出しマフラーは、CB750の大きな特徴ですね。見た目に違わず、排気音も荒々しいもの。騒音規制の厳しくなった現代のバイクが大人しく感じられてしまう迫力あるサウンドは、やはり旧車ならではの魅力ですね。
硬派なZと正統派のCB
押田:眺めているとすごく大きく感じるんだけど、跨ってみるとじつはちょうどいいサイズですよね。ハンドル位置も高くて、乗りやすそうです。 カワニシ:CCB750は北米市場を意識したモデルで、それまでのホンダ車より大柄でゆったりとしたポジションが与えられていました。とは言え足着き性は良好で、当時の日本人でも無理なく乗ることができた。その性能と乗りやすさが評価されて、デビュー翌年の1970年には白バイに採用され、警視庁の交通機動隊に200台が納車されたそうです。 押田:世界最速の白バイじゃ絶対逃げられない (笑)。おなじナナハンでもZ2(ゼッツー)はヤンチャなイメージが強いけど、CBは正統派っていうイメージですよね。ホンダとカワサキのキャラクターの違いなのかな。 カワニシ:そうですね。Z2は1975年に公開された映画『爆発!暴走族』で主演の岩城滉一が乗っていたことから人気に火が付き、かたやCB750といえば1975年から1985年まで『少年チャンピオン』で連載されていたマンガ『750ライダー』のイメージ。こちらは青春学園もので、主人公の高校生、早川光は1971年式のK2型に乗っていましたね。 押田:高校生でCB750に乗っているなんて、羨ましい!(笑) でも、実は僕の友だちでもシービーに乗っているのがいるんですよ……いいなぁ。 カワニシ:さすがに“砂型K0”は驚くような金額になっていますが、CB750は製造期間が長く生産台数も多いので、後期のモデルなどは、かなりこなれた価格のものもありますよ。ガクくんみたいな若者でも、がんばれば手が届くはず! 押田:ほんとですか? こうしてじっさいに触れると、本当に欲しくなります。夜な夜な中古車検索が止まらなくなりそう!
【プロフィール】押田岳(おしだがく)
1997年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学人間科学部卒業。2016年に第29回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリに輝く。2018年、特撮テレビドラマ『仮面ライダージオウ』に明光院ゲイツ/仮面ライダーゲイツ役を務める。近年は映画『嗚呼、かくも牧場は緑なりけり』、ドラマ『その結婚、正気ですか?』『トリリオンゲーム』、舞台『巌流島』『ラヴ・ミー・ドゥー!!』『西遊記』など。映画『水平線』が2024年3月1日より全国公開中。 文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・堀直樹 ヘア&メイク・Ryo 編集・稲垣邦康(GQ) 取材協力・UEMATSU