夫の休みは3ヶ月で2日…部活動顧問の妻の苦悩「夫はいないのと一緒」
それでも、多くの教員が部活動指導に従事する理由の一つとして、内田教授は、伝統的に作り上げられてきた教員像を指摘する。 「お金や時間に関係なく子どものために働いてなんぼという、“聖職者”としての教員文化がずっとあるんです」 目の前に部活動に参加したいと希望する生徒が存在し、他の教員がそれぞれ別の部活動の顧問に従事しているなかで、自分の時間が減るからという理由で顧問を拒否できる教員など、ほとんど存在しないのだ。 そして、長時間労働でどんなに疲れていたとしても、家庭での時間が作れず心苦しい思いを抱えていたとしても、それを生徒や保護者の前でさらけ出すことは決してない。なぜなら、それが教員のあるべき姿だと、教育上必要なことだと、他ならぬ教員自身が信じているからだ。 だからこそ、国や各地の教育委員会が制度として教員の働き方を整えることが必要だ。現在、国は、教員をとりまく環境整備に向けて、部活動支援員をはじめとする支援スタッフの拡充を促していて、部活動の地域移行を進める自治体も広がっている。 そして、こうした動きを加速させるには、家庭や保護者の理解が必要になってくる。学校の先生は決して“聖職者”ではない。少しばかり特殊で代わりのきかない仕事に従事する“労働者”であり、子どもがいる場合には“保護者”なのだ。 平日5日間働いたら、土日は体を休めたり趣味を満喫したりすることは全く悪いことではないし、子どもと休日に出かける時間は確保していいはずだ。
生徒にとって“いい先生”でも、家族にとっては“いないのと一緒”
教員の夫をもつ由利さんは、こうも言っていた。 「部活動が全くの悪だとかそういうわけじゃなくて。夫はいきいきしているし、こんなにひどい状況じゃなければ部活動顧問に熱を注ぐのは構わないと思っています。だけど、限度があるでしょう」 「部活動の生徒たちからみれば熱心でいい先生なんだろうけど、私から見たら夫はいないのと一緒。子どもにとっても決していいパパとは言えないですよね」 もうすぐ10ヶ月になる赤ちゃんと4人暮らし。夫の働き方に不満を抱きつつも、由利さんは日々仕事に取り組む夫の体にも心配を寄せている。子供もまだ小さい。夫には健康な体で長く元気に過ごしてほしい。健康面も含めて、“せめて月に2日休みをとってほしい”というのが、彼女のいまの切なる願いだ。 教員自身だけでなく教員の家庭にも影を落とす教員を“働かせてしまう”制度。抜本的な改革はいつになるのだろうか―。