桜井政博も認めたファミコンの傑作が令和に蘇る! 色褪せない名シリーズ『Gimmick! Special Edition』&『Gimmick! 2』レビュー
1971年に創業し、ゲーム業界を黎明期から支えてきたソフトウェアメーカー・サン電子。彼らのゲームブランドであるSUNSOFTから、1992年、いまなおカルト的人気を誇るファミコン用ゲームソフトが誕生した。『Gimmick!』である。 【画像】現在も色褪せない『Gimmick!』と『Gimmick! 2』のスクリーンショット モチモチした緑色の怪獣のようなぬいぐるみ「ゆめたろー」が、他のぬいぐるみに攫われた少女を助けるために冒険に出かけるアクションゲームである。本作は、独特なゲームシステム、ファミコンの限界に挑戦したグラフィック、幻想的な音楽表現、かわいい見た目に反する極悪な難易度などの点から、いまだに語り継がれている名作だ。 ちなみに「星のカービィ」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズを生み出した桜井政博氏が「パーフェクトに負けた」と語るほどの作品である(『桜井政博のゲームを遊んで思うこと2』より引用)。 そんな『Gimmick!』についてだが、2023年7月6日、CITY CONNECTIONから初代の移植作である『Gimmick! Special Edition』が発売。翌年の2024年9月5日にはBitwave Gamesより待望の新作『Gimmick! 2』も発売されることとなった。31年ぶりの復活、そして32年ぶりの新作である。 当時を知っているわけではないが、ひとりのアクションゲーマーとして、筆者もこの2作を遊ばせていただいた。その結果わかったのは、これだけ名作ゲームが飽和している現代においても、本作が持つ魅力はまったく薄れていなかったということだった。 ■ゆめたろーの物語はここから始まる『Gimmick! Special Edition』 まずは初代『Gimmick!』の移植作から見ていこう。 本作はオールドスクールな2Dプラットフォーマーだが、ちょっとユニークな特徴がある。ゆめたろーの攻撃方法だ。攻撃ボタンを長押しすると、彼の頭上に星が現れる。ボタンを離すとゆめたろーは自身の向いている方向に星を投げる。星は大抵の敵を倒してくれるうえに、床や壁にぶつかるとバウンドするのだ。 バウンドした星に上手く乗ることで、ステージを高速で進んだり、隠しアイテムのあるマップに行けたりするが、そもそも星が素早くバウンドも急なので、そんなに簡単ではない。たったワンギミックなのに、テクニックを要求されるところが面白い点だ。 そんな難しい能力がひとつあるだけなのにも関わらず、世界は意外にもゆめたろーとプレイヤーに厳しい。トリッキーな動きをする敵、見てから回避するボス、ばら撒かれる弾薬、ギリギリジャンプのあいだにある即死トラップ……ひとつひとつは2Dプラットフォーマーの典型とも言えるものが多いが、それらを容赦なく敷き詰める底意地の悪さもまた、このゲームの特徴だ。とはいえ、頑張ればクリアできるくらいにしっかりした調整もなされている。 幻想的なチップチューンや、ファミコンの限界に挑戦したグラフィックも素晴らしい。ファンシーさを保ちつつ、メリハリの効いたわかりやすい画面構成で、当時のSUNSOFTのゲーム作りへの姿勢が感じられる作りだ。 姿勢の話でいうと『Gimmick! Special Edition』には当時の説明書の画像などが付いており、コレクターアイテムとしてもとても良いものになっている。 説明書を読んでみると「アクションゲームの細部にこだわって創ろう」や「全画面の敵はメモリーされており、画面をスクロールした時、一度死んだ敵に再び出会うことがない」といったこだわりが書かれていた。ファミコンという制約のなかでいかに世界観や物語を構築するかということに多くのクリエイターが執心した時代だっただろうが、特に『Gimmick!』はそれが感じられる一本だった。 真エンディングの達成条件は厳しいものだが、巻き戻し機能やクイックセーブも実装されているので、ちょっとズルしながらでも見てみてほしい。小さくてかわいいゆめたろーの勇気と度胸に胸打たれること間違いなしだ。 ■ゆめたろー is BACK! あのデビッド・ワイズも参加した『Gimmick! 2』 そして32年の時を経てついに生み出された続編『Gimmick! 2』。こちらは開発を『ワンダリング DX: 1-1モブの逆襲』を手掛けたBitwave Gamesが担当している。 ドット絵を卒業し、美麗なCGを駆使して作られたギミックワールドは、当時の雰囲気を残しつつ、現代風のビジュアルになっている。こちらもなかなか美しい。 相変わらず星を投げることしかできないゆめたろーだが、星をワンボタンで投げられるようになっていたり、そもそも難易度設定も「ギミック!」と「アシスト」から選べたりと、アクションが苦手な人への配慮も考えられていた(アシストを選ぶと、体力が3つから5つになり、足場も増える)。 初代『Gimmick!』から残機制とアイテムとスコアが削除され、ステージギミックや大量の隠しコスチュームなどで楽しませるデザインに変わっており、『Celeste』などの精密プラットフォーマーを彷彿とさせる作りで、このあたりも非常に現代風である。 おはぎやトリさんといったアイコニックなキャラクターを始め、細かいギミックもいくつか輸入されているが、敵の動きや星の挙動などは明らかに納得感のある良い調整がされている。ファミコンのカルトな激ムズゲーの延長線を作るのではなく、いまのゲームとしてどう作れば面白くなるのか、といった点についてよくよく考え抜かれていた。 また、音楽はあの「スーパードンキーコング」シリーズなどで知られるデビッド・ワイズ氏が担当している。『Gimmick!』の穏やかなトーンはそのままに、クリアで聞き心地の良いアレンジがなされていた。 なお、お話の展開などは『Gimmick!』とほとんど変わらないので、その点は好みが分かれるところかもしれない(一応続編であるという前提で描かれているカットもあるが)。 以上『Gimmick! Special Edition』と『Gimmick! 2』をレビューさせていただいた。
各務都心