メキシコとの国境地帯の砂漠で「20年間で4000人以上の移民が死亡」実際の死者は3~8倍との指摘も
多数の移民が命を落としている
こうした措置によって移民の正確な位置を把握することが、救援活動では決定的に重要になるとギャンブラーは語る。「(移民の死に関する)データが限定的であることを認識する必要がある。議会や政策立案者、そして市民が、国境警備隊の発表する統計について(実際はもっとひどいという)状況を知るべきだ」 19年10月~昨年4月に、行方不明になったと米厚生省に通報があった移民の子供3340人のうち、実際に発見された数は1%にも満たない。 国境警備隊がボランティア団体の活動を歓迎し、きちんと記録を取っている地域もあるが、それは例外的だとジョーンズは言う。「この25年間、(多くの移民が命を落とす)危機はずっと続いてきた。移民が1人保護される裏では、多数の移民が命を落としている」 「捜索団体や救援団体のおかげで、この悲劇の全容について、これまで以上に多くのことが分かってきた。それなのに発見された遺体がきちんと登録されないことは、いら立たしく、悲しく、率直に言って非人道的だ」と、ジョーンズは言う。「彼らも誰かの父親、母親、姉妹、あるいは兄弟だった。そしておそらく、非常に恐ろしい死に方をした」 あまりにも多くの移民がやって来ることに圧倒されるのは分からなくはないと、カーペンターは国境警備隊に一定の理解を示す。だからといって、当局が移民の死を、観光客やアメリカ人の死と同じように扱わない状況は許されないと言う。 カーペンターが所属するバタリオンは、移民が合法的にアメリカに入国する方法について、連邦政府がもっと人道的な対策を講じるべきだと考えている。この点について本誌はCBPに取材を申し入れたが、コメントは得られていない。 ジョーンズによると、これまで国境地帯で見つかった遺体のほとんどは、25~35歳のメキシコ人男性だった。だが、最近はそのパターンに変化が見られるという。「女性と思われる遺体が増えている」と、ジョーンズは言う。バタリオンの昨年の統計でも、テキサス州エルパソ近郊で発見された遺体の約半数は女性だったとされている。 性別は分かっても、身元が分からないことは多い。それでも例外はあると、カーペンターは言う。「出生証明書を持っている遺体を発見したことがあり、その女性の名前、年齢、出生地が分かった。私も行ったことがあるメキシコの町だった」 しかし、その遺体を回収するには、8日もの時間と、メキシコ領事館からの働きかけが必要だったという。「彼女のことを考えるとつらかった。1週間も放置されたままだなんて。しかもその理由が『いろいろ大変だから』なんて悲しすぎる」