豊昇龍1敗堅守「まだまだ解説してくれると思ったけど」北の富士さんとの思い出明かす
<大相撲九州場所>◇12日目◇21日◇福岡国際センター 元横綱でNHKの解説者として活躍した北の富士勝昭さん(享年82)の死去判明から一夜明けて、優勝争いは2大関のマッチレースが色濃くなった。初優勝を狙う琴桜(27=佐渡ケ嶽)は関脇大栄翔を押し出し。豊昇龍(25=立浪)も正代を寄り切り。ともに譲らず1敗を守った。豊昇龍は北の富士さんについて「恩人」と明かして、大関昇進後の初優勝へ気合を入れた。 ◇ ◇ ◇ 気迫に満ちあふれた相撲で快勝した。豊昇龍は約20キロ重い正代の立ち合いをまともに受け止めて、1歩も下がらず寄り切った。「しっかり当たるように。集中してやりました」。大関昇進後、今年春場所に並ぶ自己最多の11勝目となった。 北の富士さんの訃報に「びっくりしたよね。まだまだ解説してくれると思ったけど」。忘れられない思い出がある。2年前の名古屋で、2日目から4連敗。「風呂に行った時にばったり会った」という北の富士さんに「どうした豊昇龍。俺は君の相撲が好きなんだよ」と激励されたという。 ありがたい励ましを得て、その場所は9勝6敗と勝ち越した。「入門した時からね、『頑張れ』と言ってくれた。ありがたかったですよね」。元横綱の視線があって、初優勝から大関昇進も果たした。いわば恩人の逝去に発奮しかない。優勝争いは「意識していない」と言い「自分の相撲をとるだけ」と引き締めた。 残り3日。同じ1敗を守った琴桜とのマッチレースの様相が色濃い。その中で「終わったことは考えない。明日のことしか考えていない」。目の前の相撲に集中、集中で賜杯に向かって突き進む。【実藤健一】