多くの犠牲者を出した梨泰院「雑踏事故」から2年、現地は今どうなっている…? 韓国専門家がリポート
◆行事としてのハロウィーンは自粛傾向に
惨事直後、各種コンサート、百貨店のセール、季節の行事など、あらゆるイベントが中止された。2023年に入り、少しずつ日常の光景に戻りはしたが、自粛の風潮が全くなくなったわけではない。社会的な追悼の雰囲気をくみ、「ハロウィーン」という言葉を前面に出して行うイベントやコンテンツは随分と減った。 幼稚園や学習塾は年間行事の中に必ずハロウィーンがあり、子どもや先生が仮装をしてお菓子を配るというスタイルがほぼ定着していたのだが、それも規模の縮小、あるいは開催しないことを決めた施設が多い。 ハロウィーンを最も商業活用してきたテーマパークの場合、 実際にはそれを連想させる内容ではあるものの、イベントやパーティー名に「ハロウィーン」が入らなくなった。 また、主要百貨店なども関連マーケティングを控える傾向にある。 2022年10月29日、「あの日政府は存在しなかった」、そう感じた国民は多い。尹大統領は「安全な韓国をつくる」ことを約束しながらも、梨泰院の惨事から1年の遺族追悼式を訪れなかった。 この追悼式を「政治集会」と見なしたのがその理由とされているが、セウォル号事件の1周忌追悼式に朴槿恵元大統領が出席しなかったことをほうふつとさせる。「国民の傍らに常に国家が存在する韓国を目指す」と発言していた政府高官もいるが、国民が望む在り方でそれが実現するのはいつになるだろうか。 梨泰院で起こった群衆事故は、韓国社会全体に深い傷痕を残したままだ。そして今年もまた10月29日を迎える。
▼松田 カノンプロフィール
翻訳家・カルチャーライター。在韓16年目、現地のリアルな情報をもとに韓国文化や観光に関する取材・執筆、コンテンツ監修など幅広くこなす。著書に『ソウルまるごとお土産ガイド(産業編集センター)』などがある。All About 韓国ガイド。
松田 カノン(翻訳家・韓国専門カルチャーライター)