スクールバスが充実の私立に対し公立は…「24年問題」が高校生を直撃、支援に前向きではなかった県も動く
地域住民の移動を支える公共交通機関が細ってきている。人口減や過疎化に加えて、新型コロナウイルス下での行動制限に伴う利用減も追い打ちをかけた。鹿児島県内も例外ではない。自由に動ける態勢づくりへどうすればいいか。地域公共交通の在り方を考える。(連載かごしま地域交通 第1部「ゆらぐ足元」⑥より) 【関連】姿消すスクールバス…「志望高校の選択肢狭まる」「移住も視野」支援求める学校や保護者だが、県は「一部だけ、平等性に欠ける」
志布志市は2024年度、路線バスやJR日南線を使う市内在住の高校生の通学費を補助する制度を拡充した。もともと志布志高校生向けだったのを、対象を公立私立を問わず高校全般に広げた。志布志高に市外から通う生徒にも以前から通学費の3分の1を補助している。 市内在住者への補助は定期券や回数券代の半額で上限はない。市によると、7月末までに曽於、鹿屋市を含む3市の6高に通う94人が申請した。うちバスは92人、JR2人。志布志高は50人で、うち38人が志布志市外からだった。 地元に住む志布志高3年の50代の父親は「3カ月定期で4万円ほどかかり、補助で家計の負担感は随分違う。中学3年の子がいる近隣市の知人も、補助を受けられると知り志布志高を進学先として意識している」と話す。 中学卒業後の進学先が町内にない大崎町は、高校だけでなく高等専門学校や専修学校も対象とする。バス定期代の半分を補助し、上限は月額1万円。8月末までに3市7高の61人が申請した。
□ ■ □ 志布志市と大崎町の狙いは地域公共交通の存続にある。市の担当者は「通学生は路線バスやJRの主要利用者。乗り続けられるよう支えて路線維持につなげたい」と強調。保護者の経済的負担を減らすことで、バイク通学や自家用車送迎からの移行も期待する。町の担当者も「路線バスは減るばかり。何とかストップさせたい」と危機感を表す。 薩摩川内市は、子育て支援の一環で中学・高校生の定期代などを補助する。本年度は同市祁答院地域から通う川内高校生を対象に、路線バス終点から自宅までのタクシー利用料の一部も補助している。 川内高では昨年7月末に通学バスが廃止になり、PTA主体で一部地域の代替バスを運行した。しかし赤字が約500万円まで膨らみ、本年度継続を断念した経緯がある。 県教育委員会によると、生徒の通学費を補助しているのは県内19市町村。同じ学校に通いながら居住地によって差がある状況も生まれている。