【追悼’23】「ブリトニー、ピンク、ビヨンセが好き」寺沢武一さんが本誌に語った〝女体の魅力〟
漫画家・寺沢武一さん(享年68)は9月8日に心筋梗塞で亡くなった。代表作『コブラ』は’18年4月の時点で全世界での累計発行部数5000万部を超える大ヒット作だ。 【少年誌には刺激が……】セクシーすぎる衣装で物議を醸した「コブラガールズ」と寺沢さん 寺沢さんは’76年に手塚プロダクションのアシスタントに応募する。絵柄が手塚治虫とは異なるという理由で一度は選考から落とされたものの、作品が手塚氏本人の目に留まり採用されたという。’77年に第13回手塚賞で佳作に入選、『週刊少年ジャンプ増刊号』で1話読み切りの『コブラ』でデビュー、翌‘78年に『週刊少年ジャンプ』で『コブラ』の連載が始まった。 『コブラ』は左手の特殊な光線銃「サイコガン」を武器に、銀河系を股にかけて活躍する一匹狼の宇宙海賊・コブラを主人公にしたSFアクション。アメコミ風でエアーブラシなどの凝った作画技法を用いたポップアートのような絵と、当時大ヒットしていたスターウォーズのようなスペースオペラ的な世界観が衝撃的だった。 だが、寺沢さんは絵のクオリティの高さゆえに遅筆であることでも有名だった。連載は一定の休載期間をはさんでその間に書き溜めるという、当時の『少年ジャンプ』としては特例ともいうべきスタイルで続けられた。 また、漫画の作品作りにデジタル技術を導入したパイオニアとしても知られる。’85年には日本初のデジタルコミック『黒騎士バット』を発表している。寺沢さんは’95年に本誌の取材に応えてデジタル化の苦労について語っていた。 《問題は出力。データからポジを起こすシステムは1コマ3万~5万円かかった。それじゃ原稿料のページ単価より高い(笑)》 それ以外にもプリンターの個体差が色調に出たり、昼と夜ではモニターの色調が違うなど、問題は山積みだったそうだ。それでも海外市場を意識すると、デジタル化は必要だと考えたという。 また、『コブラ』といえば、寺沢さん独特のリアルなタッチで描かれたド迫力のプロポーションにセクシーな衣装をまとった女性キャラたち「コブラガールズ」も魅力の一つだ。連載当初はあまりのセクシーさが少年漫画にはふさわしくないと物議を醸したこともあったという。寺沢さんは’08年に本誌の『コブラ誕生30周年特別企画』で、女性の魅力的なポージングについて、次のように話していた。 《やっぱりカーブをかけるのが基本なんです。ミロのビーナスもS字。真っ直ぐ立っちゃうと棒立ちになってしまうから。どこかに丸みを入れるときれいに見えますね。僕はブリトニーやピンク、ビヨンセのダイナミックさが好きです。日本人にはない体型というのかな。サルマ・ハエックも好きで、ああいうお尻が上に張っている感じですね》 『コブラ』は’84年まで『少年ジャンプ』で連載された後、『スーパージャンプ』など媒体を変えながらも断続的に連載されていた。その間、何度かアニメ化もされている。’19年にはWebコミック『COMIC Hu』(KADOKAWA)で13年ぶりに新エピソードの連載が開始されていた。このエピソードは完結することなく、寺沢さんは旅立ってしまった。冥福を祈りたい。
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