真田広之「SHOGUN 将軍」エミー賞快挙の裏で…「日本語スピーチ」に込められた日本テレビ界への憂い(城下尊之)
【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】 アメリカのテレビ界の最高栄誉といわれるエミー賞で、真田広之(63)が主演・プロデュースする「SHOGUN 将軍」が作品賞・主演男優賞・主演女優賞をはじめ18部門を受賞。ニュースでも大きく取り上げられ、たいへん喜ばしい限りだ。 【写真】エミー賞のトロフィーを握りしめる真田広之 かれこれ20年ほど米ロサンゼルスのハリウッドを拠点にして活躍している真田だが、僕はワイドショーのリポーターだったので、真田といえばこれを思い出す。彼が昔、手塚理美と離婚した際、その原因ともされる女優・葉月里緒奈との不倫があった。だから僕は双方を取材で駆け回ったことの印象が残っている。 そのせいだろうが、真田もワイドショーの取材を敬遠しているように見受けられた。ただ、一度だけある映画の製作発表の後、単独インタビューを申し込んだことがあった。その映画ではなく、当時の映画界での“立ち位置”などを聞きたいとマネジャーに申し入れると、本人からOKが出たのだ。 彼は当時、アクションスターから役者として幅広い活躍を始めた頃で、「自分に何が求められているか」とか、目標などをほほ笑みまじりに、しかし熱く語ってくれた。アクションスターからの転機となった作品は「麻雀放浪記」だと話していたことを覚えている。 その後、イギリスのロイヤル・シェークスピア・カンパニー公演の舞台「リア王」に史上初、唯一の日本人出演者となって話題になり、トム・クルーズ主演の映画「ラスト サムライ」には渡辺謙と共に出演。それからはロサンゼルスに移住する格好でハリウッド作品に出続けている。 そして今回のエミー賞受賞。授賞式では許しを得て短い日本語スピーチが真田の口から出た。 「これまで時代劇を継承し、支えてきてくれたすべての方々、監督や諸先生方に御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」 これは感謝の気持ちと同時に、日本へ向けての強烈なメッセージだと思った。日本のテレビドラマで「時代劇」は今やまったくと言っていいほど制作されなくなった。というのも、現状のテレビでは「予算がかかりすぎて無理」という現実がある。今年、時代劇専門チャンネルが「鬼平犯科帳」のスペシャル版を制作して話題になったが、セットやロケ場所の確保は難しく、役者集めも苦労したそうだ。 真田の受賞は喜ばしいことだが、果たしてそれでいいのか。彼のスピーチは日本の現状を憂いているように聞こえた。 (城下尊之/芸能ジャーナリスト)