1回戦 明石商、投打に躍動 悲願の「頂点」へ好発進 /兵庫
<センバツ2019> 第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)第5日の27日、3年ぶり2回目出場の明石商は1回戦で国士舘(東京)に7-1で快勝し、悲願の「頂点」に向けて好スタートを切った。エースの中森俊介投手(2年)は9安打を許しながらも粘りの投球を続け、10奪三振で1失点完投。球速も自己最速タイの146キロを出した。昨秋はバント攻撃に徹していた打線も、盗塁やヒットエンドランなどの機動力を発揮。冬を越して大きく成長したナインの貫禄すら感じさせる戦いぶりに、満員の一塁側アルプススタンドは酔いしれた。明石商は第8日の第2試合(30日午前11時半開始予定)で大分と対戦する。【黒詰拓也、望月靖祥】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 二回裏、学校のイメージカラーで真っ赤に染まったアルプススタンドが喜びに揺れた。2死満塁から中森投手が押し出し四球を選んで先制すると、来田涼斗選手(2年)が右前に2点適時打。下位打線が作った好機をきっちりと生かし、主導権を握った。今春中学に進む来田選手の弟遥斗さん(12)は「うれしい。いつも兄と一緒に素振りをしている。僕もいつか甲子園でプレーしたい」と笑顔で話した。 アルプス席には、昨夏の甲子園に出場した野球部OBたちの姿もあった。前主将の右田治信さん(18)は「楽しむことも忘れないで」と語り、自分たちが果たせなかった初戦突破を祈った。 中盤以降は機動力を発揮し「ニュー明石商」を見せつけた。五回には重宮涼主将(3年)がノーサインで盗塁に成功。七回には来田選手を一塁に置いて重宮主将が左前にヒットエンドランを成功させた。試合後、狭間善徳監督は「バントだけでなく、いろんな手段を用意している。勝つためにはどんな手も尽くす」と静かに述べ、重宮主将は「機動力を使わないと勝ち進めない。しっかりと準備してきた」と胸を張った。 八回、相手を突き放す追加点が入った。中森投手がまたも押し出し四球を選ぶと、来田選手も犠飛で続いて6点目。さらに2死一、三塁から、それまで無安打だった水上桂捕手(3年)が中前に適時打を放って7点目を挙げた。水上捕手の父祥宏さん(53)は「打ててよかった。頼もしいやつです」と目を細めた。 中森投手の球威は終盤になっても衰えない。最後の打者を一塁ライナーに打ち取ると、中森投手の母美幸さん(40)は「大舞台で立派な投球だった」と息子をたたえた。 ◇いつか僕たちも ○…姫路市のソフトボールチーム「熊見コンドル」のちびっ子選手約30人が一塁側アルプススタンドで観戦した=写真。ベンチ入りした宮下匡雅(おうが)選手(3年)が小学生時代に所属したチームで、現在は宮下選手の父健吾さん(36)が監督を務める。メガホンを手にグラウンドへ声援を送る子どもたちを見つめながら、健吾さんは「甲子園の雰囲気を味わい、全員野球を学んでほしい」と笑顔で話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇しぶとさ光った一打 岡田光一塁手(3年) 二回裏2死走者なし。前の打者が簡単に打ち取られ、試合の流れを相手に渡さないために、何としても塁に出ようと思った。外のスライダーに食らいつき、ショートに内野安打。狭間監督が試合前にポイントとして挙げた先制のホームを踏んだ。六回には左中間に二塁打を放ってチームを勢いづけた。 大舞台にも緊張しなかった。シニアリーグ時代に甲子園でプレーした経験があり、22日の開会式リハーサルの後は「久しぶりに帰ってきた感じ」と余裕の表情を浮かべていた。試合中は吹奏楽部の演奏に心が弾んだ。 打撃よりも「守備の人」だと思っている。明石商に入る前は三塁手や遊撃手。昨秋の県大会と近畿大会は二塁手をこなし、失策ゼロだった。試合前に相手打者の特徴を覚え、試合中も投手の配球によって小まめに位置取りを変えている。この日は一塁手として出場し、難しい打球や送球をうまく処理した。 シニア時代に右肘を痛めた時、親身に相談を受けてくれた理学療法士に感謝しており、将来はスポーツ選手を支える仕事に興味がある。「次の試合も守りで流れを作りたい」。明石商の身上である堅守を支える気概は十分だ。【黒詰拓也】 ……………………………………………………………………………………………………… 国士舘 000100000=1 明石商 03000013×=7 〔神戸版〕