【大学トレンド】高校生の「大学ミスマッチ」どう防ぐ? 増える「探究型」オープンキャンパス
1枚の写真から広がる視野
24年に入学した古閑博美さんは、高2の時にこのプログラムに参加しました。小学生の時に、自分より小さな子どもが赤ちゃんをあやしている海外の写真を見てショックを受けて以来、世界の貧困を解決するにはどうすればいいかを考えてきました。 「国際協力というテーマに引かれてプログラムへの参加を決めました。当日のグループワークで示されたのは、屋外で汚れた水をくむ子どもの姿を写した写真です。何が課題かという話し合いの中で多くの気づきを得ることができました」 貧困についての問題意識が強かった古閑さんは、その点を重視して意見を述べました。しかし、グループの中には、道が整備されていないことや舗装されていないことなどインフラ面の課題を指摘する声もありました。中でも汚水に着目して、水衛生について発言した参加者の意見には、ハッとさせられたといいます。 「汚水の問題と貧困が悪循環になっているという意見は、自分にはない考え方でした。プログラムを通していろいろな意見を聞けて、視野が広がったと感じました」
学びのミスマッチをなくす
企画広報課の平澤さんは、参加者にこうした「原体験」をもたらすことが同プログラムの狙いだと語ります。 「ほかの人と対話することで、高校生のキャリアに対する意識に変化が起きます。自分が本当にやりたいことは何なのか、という自分への問いです。大学を選ぶ際には、偏差値や卒業後の就職先といった外的要因ではなく、自分の内なる希望を大切にしてほしい。内なる希望がこのプログラムで揺さぶられ、揺さぶられることによってその強度が上がると考えています」 古閑さんもプログラムを経験したことで変化が生じ、目指す進路を小学校教員に決め、教育学部に進学することにしました。 「漠然と国際貢献したいと考えていましたが、今の私が海外に行っても根本的な解決にはならないと感じました。それなら、こうした課題を解決したいと考える人を増やすために小学校の教員になり、日本の社会を変えようと思ったのです。長い目で見た時にそれが一番確実な方法だし、時間がかかるようで実は近道になるはずと思いました」(古閑さん) 平澤さんによれば、オープンキャンパスを重視する高校や保護者が増え、周囲に言われて仕方なく来る高校生も散見されるようになったそうです。だからこそ、そうした高校生にも期待値を上回る体験を提供したいと語ります。 「国際協力というテーマはあくまで入り口です。テーマ的には本学だと国際教養学部に直結しそうですが、看護や経営など、あらゆる分野で国際貢献することができます。プログラムには高1から参加できるので、目指す学部はプログラム参加後に時間をかけて考えてほしいし、突き詰めれば必ずしも本学に入学しなくても構いません。若者の学びやキャリアのミスマッチをなくすのがプログラムの一番の願いです」 成績や大学の知名度のみで志望校を決めた場合には、大学入学後に「こんなはずではなかった」と後悔するケースが起こり得ます。今の時点で「やりたいことがわからない」「行きたい大学がない」という高校生ほど、早い段階でオープンキャンパスに参加しておいたほうが得だと言えそうです。
朝日新聞THINKキャンパス