「アラートなボールパーソン」の成長譚。柏レイソルU-18・黒沢偲道に備わる“予測”という絶対的な才能 高円宮杯プレミアリーグEAST 柏レイソルU-18×川崎フロンターレU-18マッチレビュー
それは今から2年前のこと。柏U-18の試合へ取材に行くと、決まってボールパーソンを務めている坊主頭の少年がいた。聞けばまだ1年生。U-15から昇格してきたという。ゴール裏で写真を撮るために陣取る位置が、いつも彼と隣り合わせになるような場所だったため、その仕事ぶりを間近で見ていたのだが、とにかくすべてが“アラート”なのだ。
ピッチを見つめる集中力も非常に高く、ボールがゴールラインを割った時には、すぐにゴールキーパーへ代わりのボールを投げ入れる。いつでも動けるようにということだろうか、90分間はほとんど中腰状態。あれだけ「ゲームに入り込んでいる」ボールパーソンは、ちょっと他に見たことがない。
そのうちに本人とも言葉を交わすようになり、「そういう積極的な姿勢は絶対に試合でも生きるよ」なんて知ったような口を利いてしまった年配の取材者に対しても、「はい!頑張ります!」と元気に返事してくれるようなパーソナリティも魅力的。珍しい名前も相まって、頭の片隅ではずっと気になる存在だった。
昨年の春。福岡で開催されたサニックス杯というプレシーズンの大会で、柏U-18を取材する機会があった。試合を見ていると、大半のチャンスに絡んでくる25番の好パフォーマンスが目に留まる。写真を撮っているうちに気付いた。「あ!あのボールパーソンだ!」
メチャメチャ良い選手だったのだ。テクニックも、アジリティも、アグレッシブさも標準以上。そのポテンシャルの高さに驚きながらも、一方で彼の“ボールパーソンぶり”を知っている者としては、それも腑に落ちた。だって、もう「このチームの中でどう自分が生きるか」はイメージし尽くしていたはずだから。
「試合を見ていて思うことと、実際に試合に出て感じることは全然違って、相手のスピード感だったり、強度だったりは、見ていた時より全然高かったので、それを上回れるように自分も意識してやっていました」という黒沢は、結果的に2023年シーズンのプレミアリーグでも複数のポジションをこなしつつ、21試合に出場して5得点をマーク。チームに欠かせない戦力として、大きな飛躍を遂げることになった。