《連載:ウガンダ支援の現在地》(4) 茨城新聞記者ルポ 理想の農業国、岐路に 環境配慮の稲作普及へ
ウガンダ東部、ドーホ地区。青々とした稲が風に揺れる。鳥追いの少年が、棒を振り回して駆けていく。同国には雨期が2回あり、年間平均気温は20度前後。10年以上にわたり、同国で稲作の研究と普及に取り組む国際協力機構(JICA)の専門家、宮本輝尚さん(38)は「農業に理想的な環境で、水さえあればいつ植えてもコメができる」と説明する。 ■励み 宮本さんは20歳のころ、農業のフロンティアを目指して同国に来た。アフリカでのコメ普及の第一人者、坪井達史さんに師事し、途上国での稲作振興を学んだ。仲間は増え、挑戦したいアイデアが次々と湧く。農家や普及員らの成長にも心を弾ませる。「あなたのおかげでコメがたくさん取れ、子どもが学校に行けるようになった」。そんな農家の感謝の言葉が励みだ。 同国ではコメ人気が急速に高まる。現地の気候に適した品種を普及させたのを機に、生産力が飛躍的に向上。都市部を中心に消費量も伸びる。宮本さんは「コメの生産量は20年で約6倍に増えた」と明かす。 ■余地 生産性向上の余地はまだある。小作農が大半でほぼ手作業。土地が豊かで「タネをまけば勝手に育つ」(宮本さん)ため、雑草を抜かず、肥料もまかない。 宮本さんは自治体と協力し、地域で発信力のある農家のリーダーをムサメサ(先生)に任命する制度を始めた。先生役となる農民に栽培技術を指導し、農家間に普及してもらう。宮本さんは「コミュニティーのネットワークが強化され、全体の収入を上げるのにも効果が出ている」と話す。 ■温暖化 そんな同国のコメ作りが岐路に立っている。政府関係者らによると、水田から出る温室効果ガスに、支援国などから厳しい目が向けられている。温暖化の影響で雨期もずれ始めた。 こうした事情を受け、JICAは今年、稲作の生産性向上と環境に配慮した稲作の普及を目指す事業を始めた。期間は5年。事業を主導する宮本さんは「持続可能な稲作のガイドラインを作り、農家がコメ作りしやすい環境をつくりたい」と力を込める。 農業分野では、茨城県内出身者2人が活躍する。海外協力隊として瀬戸凌平さん(牛久市出身)と、金井美紀さん(つくば市出身)は、農村や研究機関で活動し、収量を増やす農法の開発と普及に取り組んでいる。金井さんは「日本の農業も問題を抱えている。働く人の7割が農業従事者のこの国での経験を、いつか日本でも生かしたい」と前を向く。
茨城新聞社