男女ともコースレコードが誕生した東京マラソン2024「グローバルスタンダード」のレースにTOKYOが沸いた
日本人トップは男女とも涙のゴール
男子の日本勢はMGCファイナルチャレンジの対象レースになっており、設定記録(2時間05分50秒)の突破を目指した。しかし、思うようにペースが上がらなかった。 5㎞は14分55秒、10㎞は29分45秒。選手たちに〝焦り〟があったのかもしれない。19㎞過ぎにはオレゴン世界選手権代表の西山雄介(トヨタ自動車)らが転倒した。 日本人トップ集団は中間点を1時間02分55秒、30㎞を1時間29分15秒で通過。ペースメーカーが離脱した後、西山が33.3㎞過ぎに浦野雄平(富士通)をかわして日本人トップに浮上する。34.5㎞ではキプチョゲも抜き去り、パリを目指して突き進んだ。 「30㎞で一度きつくなったんですけど、自分のベースで落ち着いて走りました。浦野選手を抜いた後が大事だなと思っていたので、そこからどれだけ押せるかが勝負でした」 西山は30㎞からの5㎞を15分03秒で激走したが、次の5㎞は15分31秒とペースダウン。日本歴代9位の2時間06分31秒でフィニッシュするも、MGCファイナルチャレンジ設定記録に41秒届かなかった。 レース後は、「オリンピックに行きたかった。その一言です」と涙があふれた。 他の日本勢は其田健也(JR東日本)がセカンドベストの2時間06分54秒で11位。3年連続の日本人2位を確保した。昨年12月の福岡国際マラソンに続いての出場となった細谷恭平(黒崎播磨)も2時間06分55秒のセカンドベスト。30㎞を22位で通過しながら、終盤上げて13位に入った。 日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)は30㎞以降に大きくタイムを落として、2時間11分19秒の28位。前回日本人トップだった山下一貴(三菱重工)は2時間17分26秒の46位だった。 女子は新谷仁美(積水化学)が日本記録(2時間18分59秒)の更新にチャレンジした。しかし、前半から予定したペースに乗ることができず、中間点の通過は1時間09分52秒。そこからペースを上げるも、終盤はペースダウンして、2時間21分50秒の6位でレースを終えた。 「ハーフを通過したときに焦ってしまい、25㎞までに(脚を)使い果たしてしまった部分もあると思います。単純に結果が出なかったということで、それ以上でも、それ以下でもありません。本当にただただ力不足だったなと思います」 新谷は涙を浮かべながら、「今後も可能性があるなら狙っていきたい」と日本記録への再チャレンジを誓っていた。 レース後の記者会見では、「残念ながらキプチョゲ選手とハッサン選手は皆さんが期待した走りではなかったと思いますが、男女ともコースレコードが誕生しました。パーソナルベストを出す上位選手もいましたし、見所がすごくあったと思います」と早野忠昭レースディレクターは今大会を評価した。男女とも世界歴代上位の記録が刻まれ、世界のマラソンシーンでTOKYOの価値がさらに上がったことだろう。 なお2012年からレースディレクターとして東京マラソンを支えてきた早野氏は来年度から東京マラソン財団の理事長に専念。今後は大嶋康弘氏(現・レースディレクターアシスタント/日本大学スポーツ科学部教授)が「グローバルスタンダードのレースを国内で見せる」(早野氏)というミッションを引き継いでいくことになる。 東京マラソンで男子はMGCファイナルチャレンジが終了。パリ五輪日本代表にはMGCで「2位以内」に入った小山直城(Honda)と赤﨑暁(九電工)に続いて、MGC3位の大迫傑(Nike)が内定した。大迫は4月のボストンマラソンに「予定通りに出る予定」で、パリ五輪についても「出場する予定です」と自身のYouTubeで明言した。 女子は1月28日の大阪国際女子マラソンで前田穂南(天満屋)が2時間18分59秒の日本記録を打ち立てて、MGCファイナルチャレンジ設定記録(2時間21分41秒)を悠々突破。3月10日の名古屋ウィメンズマラソンでは同設定記録を安藤友香(ワコール)と鈴木亜由子(日本郵政グループ)がクリアするも、前田の記録には届かない。パリ五輪にはMGCで「2位以内」に入った鈴木優花(第一生命)と一山麻緒(資生堂)、日本記録保持者の前田が向かうことになる。
酒井政人