【UFC】殿堂入りしたフランキー・エドガーが語ったこと「全力を尽くして戦った。後悔はない」──アイアン・アーミー・アカデミー開設へ
◆“ビッグガイ”である必要はない。“ビッグハート”であるために
エドガーは「カムバックは考えていない」という。 「引退はしたくなかったけど、その選択をした。“今がその時だ”と思ったんだ。他のことで忙しかったからね。もちろん、まだ自分の中に闘志はある。決して消えることはない。70歳になっても、あのクソみたいな気持ちは消えないよ」 MMA36戦24勝11敗1分。UFCでの「ファイト・オブ・ザ・ナイト獲得2位」、「チャンピオンシップのトータルファイトタイム6位」という記録以上に、自身に訪れた多くのチャンスに感謝している。 「子どもの頃は、自分がこれまで訪れたすべての場所に行くチャンスがあるとは思ってもいなかった。ブラジルに何度も行き、フィリピン、韓国、日本、アブダビ、ロシアでも戦った」 記者会見や計量で押し合いへし合いすることも叫ぶこともなく、エドガーは常に拳に語らせることに満足していた。歴戦のなかで身体に刻まれた傷は少なくない。鼻を折った回数は数え切れない。鼠径部と背中の手術を受け、股関節置換手術も数回受けた。これらはすべて日常の仕事の一部だった。 「ファンが私の戦いを楽しんでくれたことが嬉しい。私が全力で戦うのを見て、ファンも楽しんでくれると思って戦っていた。私の試合のどれを選んでも、私がどんなタイプのファイターか分かると思う。UFCでの最初の試合は、私のタイプ、戦い方、ハートがよく表れている。そしてグレイ・メイナードとの試合はダメージを負いながらも、3戦目で彼をノックアウトして勝つ方法を見つけた。あれは間違いなくいい試合だった。私は一方的に戦うだけでなく、全力を尽くすんだ」 いつも自身より大きな男と戦ってきた。そのキャリアに後悔はないという。 「私のキャリアを振り返って、本当に後悔はない。もちろん、何人かのジャッジのスコアが私の方に来れば良かったとも思うけどね。もしかしたら3度、4度、5度と王座を防衛する選手になれたかもしれないけど──そういうものなんだ。敗戦や苦難があったからこそ、今の自分がある。それに感謝しなければならない。それが旅の一部なんだ。立ち上がる限り、何度倒されてもいい。“最も大きな男”である必要はないんだ。“最も大きなハートを持ったいい男”であるために」 ◆地元が舞台の映画に出演、アイアン・アーミー・アカデミーを開設 戦いから離れて「ダウンタイムは好きじゃない」という。2023年には映画『The Bastard Sons』に出演した。 脚本家で監督のケヴィン・インタードナートがエドガーのポッドキャストのゲストに登場したときに、この話が進んだという。キャストの多くがニュージャージー州出身で、同州の文化を描写した作品の主要キャストとして、俳優業に挑戦した。この映画は、Amazon Primeで視聴が可能だ。 「自分でも予想していなかった。ケヴィンは地元の出身で、同じサークルの知り合いなんだ。彼はレスリング経験があって軍に所属していたからゲストに呼んで、この脚本のことを話してくれたんだ。『小さなカメオ出演をしたいか』と聞かれて、友人のロジャー・マシューズと私は2人とも『イエス』と答えたんだけど、数週間後に本当に『役がある、興味はあるか』と言ってきたんだ」 さらに、映画の主な役の一人が突然降板したため、インタードナートはエドガーにより重要な役割を担うチャンスを与えた。 「ケビンが私を信頼してくれたので、真剣に取り組んだよ。すべてのセリフを研究し、各シーンに備えて準備を整えた。MMAのトレーニングと規律に関する経験が役に立ったと思う。私は決して芸術的なタイプの子供ではなかったし、未知の世界だったけど、ケビンはとても助けてくれた。これが私にとって初めての演技だったけど、とても気に入ったので、もっと楽しみたいと思ったよ」 そして、今でも彼はトレーニングを続けているという。それは新たなエドガーの居場所だ。 「現役と同じようなスケジュールだよ。朝はジムにいるし、夜は子供と練習したりする。ニック・カトーネ(UFCミドル級ファイター)のジムで地元の選手たちの練習を手伝っているんだ。それに、トムス・リバーで自分のスクールを開くんだ。子供たちを追いかけるだけで忙しくなるのは間違いない。スピードは落としていない。今でもトレーニングは続けているよ」 『アイアン・アーミー・アカデミー』と名付けられた彼の新しいジムは、エドガーの次の大きなプロジェクトで、助けを求めるファイターやレスラーを指導するが、UFCファイター育成というより、自身がそうであったように、子供たちが格闘技によって人生を豊かにするきっかけになってほしいという。 「アイアン・アーミー・アカデミーは私のコミュニティのための学校なんだ。子供たちの人生を変えたい。レスリングや柔術が自分自身を含め、多くの人たちにしてきたことを目の当たりにし、自分のコミュニティの子供たちに選択肢を与えること、それが私の目指すことであり、大人たちや多くの人にとってもグラップリングとそれに付随するコミュニティは役に立つと思う。私の人生を変えてくれた。私はそれを提供したいんだ。 もちろん、トップを目指すようなファイトチームが自然に、有機的に起こるのであれば、私はそれに大賛成だ。私の息子もいつかは格闘技をやりたいと思うかもしれない。彼を育て、彼のためにチームを作る手助けができればいいと思う。今は、プロのためではなく、地域のため、学生のためのジムという意味合いが強いんだ」 “ジ・アンサー”の異名を持つ男の「UFC殿堂入り」後の答えは、決まっているようだ。 「引退して、スポットライトを浴びることがなくなって落ち込んだりする男の話をよく聞くだろう。私はスポットライトを浴びるような男じゃなかったけど、落ち込んだり憂鬱になったりする方法を知らないんだ。そんなことを考えている暇はない。子供たちを追いかけ、人生の次の冒険を追いかけるのに忙しすぎる。そうすることで、落ち込まずにいられるんだ。“人生の次の部分”を楽しんでいる。落ち込む理由なんてない。白帯を取り直すようなものだ。登るべき新しい山がある。またひとつ、モチベーションが上がったよ」