【社説】与野党伯仲 国会運営を改める好機だ
民意は自民、公明の連立与党に猛省を促し、与野党が伯仲する国会状況をつくった。与野党に変化を促す絶妙なさじ加減である。 衆院選で自民は公示前から65議席、公明は8議席減らす大敗を喫した。与党の議席は過半数を18議席下回り、衆院では与党だけで法案を通すことが不可能になった。 当面の焦点は新たな政権の枠組みに移る。 「自公で過半数」の目標を達成できなかった石破茂首相は、進退を含む責任論がある中で続投を表明した。公明との連立継続を決め、野党の一部を取り込みたい意向だ。 議席を大幅に増やした立憲民主党も、非自民勢力を糾合した政権交代を描く。 与党と立民から秋波を受ける日本維新の会、国民民主党は、どちらとも一定の距離を置く。先行きは不透明で、少数与党による不安定な政権運営となる可能性もある。 どのような政権の枠組みになっても、与野党が一致して取り組むべきことははっきりしている。「政治とカネ」の問題に決着をつけることだ。 自民は派閥裏金事件を重く受け止めようとせず、調査や再発防止策を小手先で済ませた。その姿勢に国民の怒りが高まり、衆院選で厳しい審判を受けた。この問題に再度向き合うのは当然である。 首相はきのうの記者会見で、政党が議員に支給し、使途公開義務のない政策活動費を廃止する方針を明言した。選挙公約では「将来的な廃止も念頭」と曖昧だったが、他の政党と足並みがそろう。 国会議員に月額100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開、未使用額の国庫返納にも踏み切る。 発言した通り、与野党協議で速やかな実行を求める。 それだけでは足りない。癒着の温床になる恐れのある企業・団体献金の廃止にも踏み込むべきだ。「抜け穴」だらけの政治資金規正法はもう一度改正し、資金の透明性を高めなくてはならない。 首相は記者会見で「心底から反省し、生まれ変わる」と述べた。後がない覚悟で臨んでもらいたい。 物価高対策や能登半島の被災地復興などは遅滞なく進める必要がある。政権の枠組みを巡る混乱で、政治空白を長引かせてはならない。 2012年に発足した第2次安倍晋三政権以降、自公政権は国会の過半数を大きく上回る議席数を背景に、国会論議をないがしろにして政策転換を重ねた。選挙結果を踏まえ、長期政権のおごりを改める時だ。 与野党伯仲を国会改革の好機としたい。与党は野党との合意形成に努め、強引な国会運営をなくす。野党も審議拒否に象徴される古びた日程闘争から脱却する。 国民の目に国会が変わったと映らないようでは、国政選挙で2人に1人しか投票しない傾向は変わらない。
西日本新聞