池松壮亮、東出昌大、鞘師里保 今秋注目の俳優陣から“読む”いまの時代や社会
『十一人の賊軍』『らんぼうものめ』など、鞘師里保の躍進
●鞘師里保 絶賛上映中の『十一人の賊軍』に出演している鞘師里保の動きにも触れておかねばならない。 モーニング娘。を卒業し、近年はアクティブな俳優活動を展開している鞘師。2024年は『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』(テレビ東京系)で連続ドラマの初主演を飾り、今回の『十一人の賊軍』で俳優としての本格的なスクリーンデビューを果たした。 この『十一人の賊軍』とは、戊辰戦争下に繰り広げられる壮大なスケールの抗争劇を描いたもので、新発田藩の罪人たちで構成された決死隊が新政府軍の進撃を食い止めるべく奮闘する。鞘師が演じるなつは、賊軍の唯一の女性だ。自分を捨てた男の家に火をつけて罪人になった人物である。 本作は仲野太賀と山田孝之を筆頭に、錚々たる演技者たちが集まっている。そこに、まだ俳優としてのキャリアは浅い鞘師が並んだ。作品の性質や規模感からいって、撮影はかなり大変だったはず。俳優活動が本格化する初期の段階でこういった作品に携わっているのは、長く続いていくのであろう彼女の演技者としての“これから”がより楽しみになってくるというもの。過酷な状況下でたくましく生きるなつの姿に、鞘師本人を重ねたのは私だけじゃないだろう。 2024年の夏に彼女は、KAAT神奈川芸術劇場の大スタジオで上演された『らんぼうものめ』という作品で主演を務めていた。これは親子で楽しめる演劇作品で、鞘師たちの演技に呼応するように、上演中は子どもたちの明るい声が響き続けた。平和と希望に満ち溢れた空間作りを、彼女は主演俳優として牽引していたのだ。もしかするとこの時間と空間を共有した子どもたちの中から、未来の表現者が誕生するかもしれない。鞘師もまた、参加する作品のチョイスがとてもユニーク。次の動きが気になって仕方がない。
折田侑駿