『SHOGUN 将軍』で一躍…アンナ・サワイのブレイク裏に「Oscar So White運動」
真田広之が主演、プロデューサーにも名を連ねるテレビドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』は、記録的な大ヒット。エミー賞をほぼ総なめにする18部門での受賞を達成した。 浮き名を流したのは葉月里緒奈だけじゃなく…米エミー賞候補の真田広之が「稀代のモテ男」時代の画像 主演女優賞に輝いたアンナ・サワイは、10月2日に発表されたアメリカの有力誌『タイム』が選ぶ今年の“次世代の100人”にも選ばれ、今や世界が注目する女優として脚光を浴びている。 このドラマは、イギリスの作家ジェームズ・クラベルが1975年に発表した徳川家康にインスパイアされた武将・吉井虎永(真田)を主人公に据えた小説が原作。1980年には三船敏郎主演でドラマ化されたこともある。 ドラマのヒットと共に脚光を集めるヒロイン――。 ◆過去にはエイベックスのダンスボーカルユニットに所属 彗星の如く現れたアンナ・サワイとは、一体どんなキャリアの持ち主なのか。そのシンデレラストーリーを紐解いてみたい。 「アンナは1992年にニュージーランドで生まれた日本人です。10歳の時に日本に移住。’04年にミュージカル『アニー』の主役に抜擢され、芸能界デビューを飾っています。’06年には『avex audition 2006』に合格してエイベックスに入所。’13年には5人組女性ダンスボーカルグループ『FAKY』のリーダーとして活躍しています。ところが女優への思いが強くアメリカの大手エージェンシーと契約。ネイティブな英語力を武器に、’21年には人気アクション映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』に出演。’23年にはApple TV +のゴジラも登場するドラマシリーズ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』で主人公を演じるなど、国際派女優としてのキャリアを着実に積み重ねてきました」(ワイドショー関係者) しかしアンナは『SHOGUN 将軍』のオーディションにすんなり合格したわけではない。 「実はオーディションでは当初、短いプロットしか読んでおらず、ヒロインの鞠子が着物を脱いでお風呂に入るシーンを演じることに、戸惑いを感じていたそう。そのせいもあり一度は落ちてしまいました。ところがプロデューサーと話す機会があり、鞠子がこれまで海外作品で描かれてきたセクシーだったり、従順だったり、アクションができるといったステレオタイプの日本人役ではないと知り、もう一度トライ。3段階のオーディションをクリアして、見事に鞠子役を勝ち取っています」(制作会社プロデューサー) アンナ演じる鞠子は、細川ガラシャにインスパイアされたキャラクター。明智光秀の娘であることから“謀反人の娘”という運命を背負って生きる難しい役どころでもあり、撮影中も役の心情や本質と向き合い続けるため、メンタル的に苦しかったと打ち明けている。 だがその心境は、鞠子を演じるアンナ自身とシンクロする部分もあったという。 「難しい役だけに演じていてやり足りていない、全然できていないと自信をなくしてしまうこともあったようです。しかしそのあたりが自信の持てない、生きていたくないと思っている鞠子の心情とシンクロすることもあり、結果的に鞠子役を正直に演じることができた。そう本人は告白しています」(前出・プロデューサー) こうして苦労が実り、エミー賞主演女優賞に輝き、今やハリウッドスターへの階段を駆け上がりつつあるアンナ・サワイ。しかし彼女の成功は、作品の魅力や彼女の演技力もさることながら、アメリカ社会におけるエンタメ産業の変化も追い風になったという。 ◆黒人映画監督であるスパイク・リーが授賞式をボイコット 「2010年代前半は、白人監督がメガフォンをとらないとヒットしない。そういった固定観念がありました。しかし’16年のアカデミー賞の俳優部門を2年連続して白人俳優が独占したことから、著名な黒人映画監督であるスパイク・リーが授賞式をボイコット。《#Oscar So White》運動が巻き起こり、その結果ハリウッドでも多様性重視が叫ばれ、’20年には韓国人監督のポン・ジュノがメガフォンをとった『パラサイト 半地下の家族』が非英語圏で史上初めてアカデミー賞作品賞を受賞。こうした変化も『SHOGUN 将軍』にとって追い風となり、アンナ・サワイを一躍時の人にした。そう言っても過言ではありません」(制作会社ディレクター) さらに、コロナ禍における世界的なパンデミックが“巣篭もり需要”を生み出し、大ヒットした『イカゲーム』のように映画や配信ドラマをそのまま音声で楽しみたい。そんな視聴者も増え、字幕視聴が一般化したことも日本人役は日本語で喋る『SHOGUN 将軍』人気を後押ししたと言ってもいい。 残念ながら『SHOGUN 将軍』第2シーズン、第3シーズンに鞠子が出演する機会はないと思われる。だが彼女には、早くも映画やドラマの仕事が殺到しているという。 次回作では鞠子のイメージを払拭するような、新しい役どころに期待したい――。 取材・文:島右近(放送作家・映像プロデューサー)
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