岸田首相、強固な日米同盟を確認へ-首脳会談で鉄鋼問題には触れず
(ブルームバーグ): 訪米した岸田文雄首相は今週ワシントンで首脳会談に臨む。日米の強固な同盟関係を確認するが、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画といった両国関係を揺るがしかねない問題は避ける見通しだ。
バイデン大統領は先月、総額140億ドル(約2兆1300億円)規模のUSスチール買収計画に反対を表明した。買収阻止を直接約束してはいないものの、介入は異例だ。米大統領選挙が行われる極めて重要な年で現職のバイデン氏は労働組合員に寄り添う立場だが、アジアで最も強力な同盟国の一つである日本との関係を悪化させる恐れがある。
日本政府は買収計画に関するコメントを事実上控えており、岸田首相も首脳会談で取り上げる予定はないとしている。ただ、この問題は、11月の大統領選に向けてバイデン氏がトランプ前大統領との再対決に備える中、多くの同盟国が不安定な立場にあることを浮き彫りにしている。
米国は日本を含む同盟国に対し、最先端技術への中国のアクセスを制限するよう繰り返し要請するとともに、南シナ海で広範な領有権を主張する中国の活動に対抗するために協力を求めてきた。米国はまた、同盟国に新たな見返りをあまり示すことなく、雇用創出につながる対米投資の拡大を望んでいる。
この数カ月、支持率が過去最低水準に落ち込んだ岸田首相は、日米間の解決が困難な問題から国民の目をそらしながら協力関係をうまく演出し、合意可能な分野に光を当てていきたい考えだ。
岸田首相は8日、訪米前に記者団に対し、日米は「国際社会のさまざまな課題を共にリードしていく存在である」と述べた上で、「日米関係が一層盤石なものであるということを確認し、それを世界に発信する大変重要な機会になる」と語った。
ビジネス上の論理もあるだろう。事情に詳しい複数の関係者によれば、買収計画を単なる民間企業同士の問題として捉えることで、計画が存続する可能性が高まるという。