コロナで売上7割減、月400万円赤字…激戦区の「ラブホテル社長」が明かす生き残る秘訣と“困った迷惑客”
1億円近く借り入れた大規模な改修
20代後半で後を継いだ時の大きな課題が、18部屋全室をはじめ、館内の大規模な改装だった。当時、設備が古くなりつつあったという。専門の建築士による設計デザインのもと、館内の廊下や室内の浴槽やジェットバス、水中照明、トイレ、照明、ベットやシーツ、65インチのテレビ、壁などからグッズや小物にいたるまでを変えた。安心して利用してもらえるようにと、防音対策を徹底させた。1億円近くの予算となるために金融機関から借り入れたが、大きな不安はなかったようだ。 「なんとか返していけるだろう、と思いました。父のもと、経営を学んできたし、この商売しか知らないし、できない。社員やパート社員やそれぞれの家族、僕の家族もいるから潰れるわけにはいかない。何よりも、ラブホテル経営が好き。これで生きていけることにとても感謝しているから、お客様に満足していただけるホテルにしたかったのです」 だが、改装後、2か月間は利用者が当初の想定よりも少なく、「どうしよう」とうろたえたという。工藤さんによると、18部屋ならば少なくとも1日に10組入らない状態が続くと、経営が成り立たなくなるようだ。 「経営を安定して続けるための1つの目安として18室の場合、1日最低2回、つまり、36組のお客様にご利用いただけるぺースを守ることとしています。3か月目から、お陰様でそのペースになりました」
リピーターが7割。集客アイデアには報酬も」
工藤さんがそのペースを維持できるように、4人の社員と20人のパート社員たちと力を注ぐのが、館内でのイベントだ。年末年始、バレンタインデー、市内の桜満開日を当てるクイズ、夏祭り、お盆、リンゴを浴槽に入れるリンゴ風呂、ハロウィン、お風呂の泡を10倍にする”バブルス10倍”、クリスマスなど毎月、イベントをする。さらに毎年、内容を変えている。 「お客様の7割前後がリピーターですから、常に新鮮さを感じ取っていただけるように工夫しているのです。いつも、全員の力でめちゃめちゃ凝ったイベントに毎回しています。赤字覚悟の試みの時もあるのですが、お客様に楽しんでいただきたいのです」 たとえば今年のクリスマスならば、大きな機械式のサンタクロースが登場したり、いたるところに装飾やグッズがあり、楽しい雰囲気を醸し出す。クリスマスにふさわしい飲み物や食べ物もつくる。オリジナルのプチシュークリームだ。 「僕よりも、社員やパートの皆さんのほうがアイデアははるかに豊富で、料理も上手い。いつもすごいなと感心しています。お客様から注文が多い場合、そのアイデアを出してくれた社員やパート社員には、感謝の意味を込めて給与とは別に一定のお金を支払っています。優れたアイデアは、お金に代えないと出てこないと思います。お金を払わずに、アイデアを求めるのは僕は避けたい。自分でアイデアを出すと、責任感を持つようになるのです」