“アナ雪の村”に観光客が殺到…住民の暮らしをむしばむ「オーバーツーリズム」の実態 悩む村の秘策は?
■頻発する渋滞…駐車場には長い列
交通の混雑も問題の1つです。村には観光バスだけでなく乗用車で訪れる人も多く、渋滞が頻発。2013年にハルシュタットを訪れた乗用車は年間7万7000台でしたが、今年は25万台が見込まれているといいます。
ハルシュタット村ではバスターミナルや駐車場を新設し、観光バスは事前に到着時間を決めて登録するシステムですが、自家用車で来る観光客も多く、渋滞の解消にはつながっていないのが現状です。
■住民たちの訴え…トンネル封鎖やデモも
そこで地元の住民は8月27日、町の中心部に続くトンネルを15分間封鎖するデモを行い、一日の観光客数や自動車の台数などを制限し、午後5時以降は観光バスの運行を停止するよう求めました。9月28日にはオーバーツーリズムに関する会議がハルシュタットで行われ、これにあわせて住民らは再び抗議デモを実施しました。
■問題は日帰り客…“入場料”の効果は?
ハルシュタット村のショイツ村長は、ハルシュタットだけでできることは限られているため、今後は州や国と連携して道路の封鎖などの対策を積極的に講じていくとしています。
もう1つの問題は「日帰りの観光客が多い」こと。日帰りの観光客は宿泊費や飲食費などをかけず、村に“お金を落とさない”ため、ショイツ村長はこうした日帰りの観光客を減らすことが目標だとしています。 ヨーロッパでは多くの都市がオーバーツーリズムに悩まされています。「水の都」として名高いベネチアでは9月5日、増え続ける観光客への対策として日帰り客から5ユーロの入場料を徴収することを明らかにしました。ヨーロッパの一部の国では入国時や宿泊時に「観光税」を取るところもあります。 しかし、ハルシュタットのショイツ村長はこれには反対だと話します。「もし入場料をとれば、ハルシュタットは博物館になってしまうでしょう。 観光客は入場料さえ払えば何をしても、どこに入っても許されると思ってしまう。ハルシュタットを『野外博物館』には絶対したくありません」 ◇ 日本政府は9月、省庁横断の対策会議を設置し、初会合を開きました。政府はこの秋にも対策をとりまとめる方針で、インバウンドによる経済の底上げか、住民の暮らしか、難しい選択を迫られています。