“アナ雪の村”に観光客が殺到…住民の暮らしをむしばむ「オーバーツーリズム」の実態 悩む村の秘策は?
観光地を悩ませる「オーバーツーリズム」。急増する観光客が住民の生活に悪影響を及ぼすとして、政府は先月、省庁横断の会議を立ち上げました。世界でも対策に乗り出す所が増えています。映画「アナと雪の女王」のモデル といわれる人気の村に観光客が殺到、対策に頭を悩ませています。
■“アナ雪の村”に観光客が殺到 中国には“完コピ村”も…
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録されているオーストリア中部の村、ハルシュタット。山と湖に囲まれた景観は、大ヒット映画「アナと雪の女王」に登場する「アレンデール王国」のモデルとも言われています。「地上の楽園」とも呼ばれ、世界中の観光客の人気を集めています。
2006年には韓国の人気ドラマ「春のワルツ」のロケ地となり、中国にハルシュタットそっくりに造った観光施設が登場すると、人口740人の村に一日1万人以上の観光客が押し寄せる事態に。新型コロナウイルスの感染が始まる前は、年間およそ100万人がこの村に訪れたといいます。
■“自撮り”防止の秘策も登場…
美しい景色をバックに“自撮り”しようと滞留する観光客に地元住民からの苦情が相次ぎ、「最も映える」スポットにことし5月、村が“自撮り”防止のための柵を設置しました。
SNS上で激しい反発を受け、まもなく柵は撤去されましたが、村は代わりに“自撮り”スポットから見える位置に横断幕を設置しました。 「私たちはここに住んでいます。大声や音楽なしに美しい景色を楽しんでください」
■“地上の楽園”も今は昔…「最後の住人」に
オーバーツーリズムに反対する市民団体のメンバー、イダムさんは「ハルシュタットはオーバーツーリズムの問題が起こる前は地上の楽園でしたが、今は違います」とため息をもらします。
広場や市場などの公共スペースが観光客に占拠されていて、村の生活に大きな支障をきたしているのだといいます。イダムさんは「ハルシュタットの面積は非常に限られているのに、観光客が多すぎるのです。ベネチアは住民一人あたりの観光客が35人ですが、ハルシュタットでは1800人なのです」とその異常さを指摘します。 また、ほとんどの家が民泊になってしまったために家賃が高騰し、それによって若者が住めなくなり、ハルシュタットはオーストリアで最も人口減少が進んでいるといいます。 イダムさんは「私たちは家の中に引きこもっています。 隣近所にはもう誰もいません。家の周りはすでに空き家になっていて、 私たち夫婦がこの地域の最後の住人なのです」とさびしそうにつぶやきました。