余命半年と宣告された妻のため、保護犬を迎えることを決意。衝動的に犬を買う人が後を絶たない日本の<殺処分の現状>とは
◆保護犬の現状 さて、環境省の統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によれば平成30年度の犬の引取りおよび処分数は、引取り35,535頭のうち、飼い主への返還あるいは新しい飼い主への譲渡ができたものが28,032頭。殺処分になったものが7,687頭となっている。 じつは返還・譲渡数そのものは平成16年度が25,297頭で約2,700頭ほどしか増えてはいない。 しかし平成16年度は全引取り数が181,167頭でそのうち殺処分が155,870頭と目を覆いたくなる数字であった。これが、ここまで減少したのは民間の保護団体の努力にほかならない。彼らによる引取りが圧倒的に増えたことで、保健所での引取りが減り、殺処分も劇的に減少したのである。 しかし、それでもまだまだ足りないのが現状。 ペット先進国であるドイツ・ベルリンの保護施設ティアハイムでは、譲渡率は9割を超えるというし、アメリカ・ポートランドではペットショップは保護団体と積極的に連携し、犬を飼う人のほぼすべての人が保護犬を選んでいるという実態からすれば、まだまだ日本は遅れていると言わざるを得ない。 しかも海外の場合は飼育できる経済力があるか、家族全員の承諾はとれているのかなど、非常に厳しい審査があり、途中で飼い犬を放棄することができないようになっていることが多いのだ。 日本ではクレジットカード1枚で衝動的に犬を買う人が後を絶たない。 そして、思ったより手が掛かる、お金がたいへんだ、鳴き声がうるさい、というような信じられないほど安易な理由で保健所に持ち込む人がいるのだ。 こうした実情を詳しく知るようになったのは保護犬のことに興味をもってからだが、知れば知るほど僕の中では飼うなら保護犬しかない、まるで使命感のようなものさえ芽生え始めていた。
◆自分のことがわからない その思いとは裏腹に僕が進めようとしていた保護犬の引取り方法は、本当は一番やってはいけない方法だった。家族にも相談せず、こういう形で受け入れたがために、後に家族から反対されて結局保健所に犬を引取ってもらったなんていう例も多数あるという。 しかし、このときの僕はなにかに突き動かされるように、なんの不安も疑問も持つことなく前に向かっていた。 保護犬を飼うことをすすめてくれたモデルでデザイナーの雅姫さんの「いざとなれば私がなんとかするから安心して!」という力強い後押しをもらえたことも理由のひとつだ。 昔から僕は100円の雑貨をひとつ買うのもなかなか決断できないくせに、マンションとか車とか金額が大きなものはそのときの咄嗟のインスピレーションで決断してしまうという悪いくせがある。 思えば就職先も、大学進学も、すべてそうだった。 そもそも理系で医学部を目指していたはずなのに、共通一次試験が終了した時点で突然思い立って文転。経済学部に変更したのは紛れもなくその現れだ。 その結果、出版というこれまたまったく脈絡のない仕事をしているという事実。自分には一番自分のことがわからない。