「トイレットペーパー不足」うわさはテレビが拡散? ネットで認知は1割強
トイレットペーパー不足のうわさや、実際の品切れの情報はテレビで認知した人が多い――。市場調査会社のサーベイリサーチセンター(東京都荒川区)が、新型コロナウイルス感染症に関するアンケート調査を実施したところ、このような結果が出た。 トイレットペーパー不足の情報については、SNS(Twitter)を中心に拡大したとされている。実際に、鳥取県内の生活協同組合が、職員の一人がこの情報をSNSで拡散していたとして謝罪する事態も起こった。しかし、今回の調査結果によって、情報の拡散にはテレビが大きな役割を果たしている可能性が高いことが明らかになった。 アンケート調査は3月6日~9日、全国の20歳以上の男女4700人を対象にネットで行った。調査内容は(1)国内に広がる不安と自身への不安の変化(2)不安を感じている要因(3)感染防止に気をつけていること(4)生活に及ぶ影響(5)買物行動の変化(6)利用や参加を控えたこと(7)トイレットペーパー不足のうわさ・状況について(8)トイレットペーパー品切れ発生への対応(9)テレビを通じた情報提供について――の大きく分けて9項目。 この中でも、トイレットペーパーやテレビ報道に関する(7)、(8)、(9)の調査結果に注目してみた。 (7)ではまず、「『トイレットペーパーが不足する』とのうわさを、最初に知った情報源」をたずねた。この結果、「テレビ」と回答した割合が最も高く全体の46.7%を占め、「人との会話・口コミ」(15.9%)や「インターネット(ホームページなど)」(13.6%)を大きく上回った。情報拡散に中心的な役割を果たした、と考えられていた「Twitter」は8.0%だった。 続いて、「実際にトイレットペーパーの品切れが発生している状況を、最初に知った情報源」についても質問。こちらの質問でも、やはりテレビと回答した割合が36.0%で最も高かった。続いたのは、「店頭で見かけて知った」(28.7%)で、ネットからこの状況を知った人はそれほど多くなかった。 (8)は、実際にどのような対応をしたかについて調べた。「当面必要な分はあるので、無理に購入しようと考えなかった」と答えた割合が半数以上の57.7%。一方、「念のため購入しようとした」という割合は12.4%で、全体からみると決して多くなかった。 これについて、同社は「一部の人が通常より多く購買するだけで、供給面で全く問題がない商品でもモノ不足が発生するということがよくわかる」としている。 (9)は今回の感染症関連で役立った情報源について、複数回答可で質問。最も高かったのは「テレビ」で82.3%。インターネット(ホームページなど)が53.1%、新聞が31.4%で続いた。 テレビの報道(情報番組を含む)における感染症関連の情報提供について評価してもらう質問も行った。結果は、「不安を煽るような映像や表現が多かった」とする回答の割合は50.4%(「そう思う」と「ややそう思う」の合計)。「何が正しい情報なのか、わかりにくかった」とする回答の割合は47.5%(同)。これらはテレビの情報を否定的に評価しているといえる。 一方で、「どのように予防対策や行動をすれば良いか、わかりやすかった」とする回答の割合が40.0%(同)、「医学や保健・衛生の難しい点をわかりやすく伝えられていた」とする回答の割合が37.9%(同)で、テレビの情報を役立てている人々が少なくない現状もうかがえる結果となった。 アンケート調査の監修に携わった東京大学総合防災情報研究センターの関谷直也准教授は「コロナウイルスへの不安、そしてこの先、日常にいつ戻ることができるのかという見通しがつかないことへの不安。この2つの不安が、今回の事態を生じさせた根本的な要因」とした上で、「新型コロナウイルスに関する報道が過熱気味になるのに伴って、人々も普段より情報に敏感になっていった。そんな中で、トイレットペーパーなどの品切れが発生している様子を『テレビ』で認知し、また『店舗』で繰り返しその様子を見かけたことで、一部の人が普段の買い方とは違う購入をした。都市部では、一部の人が普段より少し異なる購入をするだけで、途端にモノ不足になる。そして、その様子がさらにテレビで報道される。この繰り返しでモノ不足が起こっていることが、今回の調査結果からわかる」と説明している。 調査結果の詳細は、サーベイリサーチセンターのホームページで見ることができる。