「扇情的」…韓国の保守系の保護者団体が『菜食主義者』図書室配架に反対署名
全国保護者団体連合、性平等教育と学生人権条例にも反対
保守系の保護者団体である全国保護者団体連合が、2024年のノーベル文学賞を受賞したハン・ガンの小説『菜食主義者』を青少年有害媒体と称して、全国の小中高の図書室での配架に反対している。同連合はこれまで、同性愛嫌悪の主張を繰り広げてきたのはもちろん、性平等教育などにも反対してきた団体だ。彼らは、一日で1万人以上が声明に署名をおこなったと述べている。 同連合は22日に発表した声明で、「極端で暴力的な内容の本をノーベル賞作家の作品であるとの理由だけで全国の小中高の学校図書室に配架する試みに、保護者は驚愕を禁じえずにいる」として、教育部と各市道の教育庁、文化体育観光部、女性家族部に『菜食主義者』が小中高の図書室や公共図書館の児童・青少年の書架に配架されないようにするよう求めた。 同連合は「『菜食主義者』は、義兄が義妹の裸体に絵を描いたり撮影したりしながら性行為をする場面を赤裸々に描写している」として、「そのうえ義妹は突如として菜食主義者になると言って自傷行為におよび、精神病院に入院し、逆立ちをしながら木になると言って飢え死にするという奇異な内容へとつながる」と述べた。そして「映画に観覧不可等級があるように、図書にも未成年保護のために年齢制限がなければならない」として、『菜食主義者』は青少年有害媒体に当たると主張した。同連合によると、声明には22日午後7時現在で1万474人、195団体が署名している。 同連合は、17日に当選したソウル市のチョン・グンシク教育監に対しても「『菜食主義者』を最後まで読んでみたのか、未成年の孫がいるなら、果たして必読図書として推薦したいのか、公開での返答を要求する」と述べた。チョン教育監は当選前の今月13日の論評で「(保守系の候補の)チョ・ジョンヒョク候補が教育監になったら、ハン・ガンの『菜食主義者』などが学校図書室から消えるだろう」と主張している。 同連合は先のソウル市教育監補欠選挙で、保守陣営のチョ・ジョンヒョク候補を公に支持している。同連合は、21日にはOTTのTVINGのオリジナルドラマ「大都市の愛し方」について、「同性愛を助長し美化する」ものだとして、放映の中止を求める記者会見に参加している。先月4日には、差別禁止法に反対するアン・チャンホ人権委員長(当時は候補)を公に支持している。それ以外にも、性平等教育や学生人権条例などに反対してきた。 『菜食主義者』の学校図書室への配架をめぐる論戦は、22日の国会教育委員会の国政監査でも行われた。京畿道のある学校の図書室で『菜食主義者』が廃棄・閲覧制限されていたことが指摘されたことから、京畿道のイム・テヒ教育監は「深い思考の中で書かれた深い思考が込められている作品だ。ただし、作品中の『蒙古斑(もうこはん)』の章については、生徒が見るには私も少し恥ずかしく感じるほど」と答えている。そして「教育的に保護者たちが心配する部分は理解できる」として、「自分の子だったら高校を卒業してから読めと勧めたい」と述べている。これに対し民主党のチョン・ウルホ議員らは「時代錯誤的な図書検閲」だと批判している。 この日、全国教職員労働組合(全教組)も「これらの団体の非常識な要求で多くの性平等教育図書が廃棄されてきており、その中には先日アジアの女性で初めてノーベル文学賞を受賞したハン・ガンの作品も含まれている」とし、「禁書措置が可能になったのは、これらの団体の主張に教育部と教育庁、一部の学校管理者が沈黙によって同調したため」だと指摘した。 イ・ウヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )