“紀州のドンファン裁判”「悔しかったら破れ!」家政婦の供述調書に“冷え切った2人の関係性”弁護側は調書の信ぴょう性を疑う
10月8日。和歌山地裁で10回目となる審理が開かれた。まずは、野崎さんの自宅で家政婦として働いていた女性の供述調書が検察官によって読み上げられた。女性は、須藤被告と最初に接した時のことを「須藤被告から『死んだら遺産ってもらえるの?』と聞かれた」と振り返ったという。
◆「須藤被告は金目当てだったのだと思う」
続けて女性は、須藤被告が「金目当てだったのだと思う」と話し、その根拠として、須藤被告が普段から野崎さんに冷たい態度で接していて、野崎さんが話しかけても返事がないこともあり、関心がないように見えていたとした。 また、野崎さんはしばしば便が漏れてしまうことがあり、それについて被告が「汚い」などと言うこともあったとした。 野崎さんは、結婚後も須藤被告が性行為はおろか、添い寝さえしてくれないことに「結婚した意味がない、離婚したい」と憤るようになったとした。
◆離婚届「悔しかったら破ってみろ」
そしてある日、女性はリビングでこんな光景を目撃する。 野崎さんが、「悔しいか!悔しいだろう!悔しかったら破ってみろ!今から役所に行って手続きしてこい。」両手で離婚届を持ち、須藤被告に離婚届を突きつけ、憤慨していたという。 女性は居づらくなってその場から離れ、実際に破いたかどうか分からないとしたうえで、「あんなに怒っているのは見たことがなかった」とした。 検察側は”冷え切った関係性”を示し、「須藤被告に殺害する動機があった」ことを立証しようとしたとみられる。
◆弁護側が調書の信憑性に疑問 検察官を追及
しかしその後、供述調書を作成した男性検察官本人が証人として出廷すると、徐々に雲行きが怪しくなっていく。 まず検察側は、男性検察官がまとめた供述調書の作成経緯に問題がないことを示す尋問を展開。しかし弁護側による反対尋問で、以下のような事実が明らかになったのだ。 弁護士「女性は殺人事件の”被疑者”として取り調べしていたはずだが、録音録画がない。どう聞いて、どう答えたのか、記録は残っていないのか」 検察官「はい」 弁護士「須藤被告が女性に初対面で『死んだら遺産ってもらえる?』と尋ねたというが調書には日付が書かれていない。いつの出来事なのか。本当に聞いたのか」 検察官「覚えていません」 弁護士「捜査官として、通常は聞くのではないか」 検察官「聞くかもしれませんが…」 弁護士「録音・録画がないから検証ができない。なぜ書いていないのか」 検察官「聞いていないのかもしれないし、実際に聞いていて女性が答えていても、私が調書に書き忘れたのかもしれません。ただよく覚えていません」