イエメン・フーシ派による紅海での船舶攻撃で、世界の物流が混乱
紅海、スエズ運河経由は海上コンテナ輸送全体のおよそ10%
11月以降、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返している。彼らは、イスラエルと関連があると判断した船舶に、無人機やミサイルによる攻撃を行うとしている。これが、世界の物流を混乱させ、また物価上昇リスクを高めている。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、イランの準軍事組織が、フーシ派にリアルタイムで情報提供を行い、それを用いてフーシ派はドローン(無人機)やミサイルで船舶を標的にしていると報じている。 紅海はアジアと欧州を結ぶ重要な水路で、船舶交通の要所であるエジプトのスエズ運河を経由する輸送は、海上コンテナ輸送全体のおよそ10%を占めるという。海上コンテナは世界の物資輸送の3割を占め、輸送金額は年間1兆ドルに上る。 また紅海は、石油・天然ガス輸出の大動脈の一つと言える。米エネルギー情報局(EIA)によると、航海を経由するエネルギー輸送は、2023年1-6月期の海上石油貿易全体の12%、液化天然ガス(LNG)の世界貿易の8%をそれぞれ占めていた。 スエズ運河の輸送量は、ウクライナ紛争後に増加している。経済制裁を受けたロシアの原油輸出先が、欧米から、スエズ運河を経由してアジアに向かうようになったためだ。インドのロシア産原油輸入量は、ウクライナ戦争が始まる前の2021年には日量9.7万バレルだったが、今年の1月-11月には日量163万バレルまで増加している。 また欧州も、ロシアが昨年停止したパイプラインでのガス供給の代替先として、カタールからの紅海経由でのLNG輸入への依存度を高めている。 S&Pグローバルによると、スエズ運河経由の石油輸送量全体は、今年1~11月に日量平均472万バレルとなり、前年同期比で46%増加している。
世界の海上輸送能力が20%減少との分析も
22日のロイター通信などによると、フーシ派による紅海での相次ぐ船舶攻撃のため航路を変更したコンテナ船は、少なくとも158隻にのぼるという。これらコンテナ船の貨物の金額は、コンテナ1個あたり5万ドルとすると、合計で1,050億ドルに達する。 紅海はスエズ運河を通って地中海につながっているが、紅海航路を利用できず迂回する場合には、コンテナ船はアフリカ南端の喜望峰を回ることになる。スイスの物流大手「キューネ・アンド・ナーゲル」によると、スエズ運河を経由してアジアとヨーロッパの間の輸送にかかる日数は通常30日から40日程度であるが、アフリカの喜望峰を経由するルートを通る場合には、スエズ運河経由と比べて片道で10日から15日、往復では3週間から4週間余計にかかる可能性があるという。さらに「キューネ・アンド・ナーゲル」は、航行時間が長くなることで、世界の海上輸送能力が20%減少することが予想される、としている。