「中古車廃棄」を助ける新ビジネス? 日産の“レトロ化”キューブは、SDGs時代の希望かもしれない
キューブの再生プロジェクト
日産自動車は、認定中古車をカスタマイズした特別車「キューブ レトロリノベーション」を2024年1月22日に発売し、ディーラーである奈良日産自動車(大和郡山市)から20台限定でトライアル販売するとした。 【画像】えっ…! これが日産の「年収」です(計10枚) このクルマは、現在は販売終了している日産キューブをベースにカスタマイズしたシリーズのひとつで、自動車メーカーが自ら中古車をカスタマイズするのはこれまでほとんどなかった。 日産キューブは長寿モデルで、最終モデルとなった3代目キューブは2008(平成20)年から2020年まで生産された。コンパクトなサイズと四角いボディの広さで、若者からファミリーまで幅広い層に人気があった。 しかし、長寿モデルで最新の環境性能に対応することが難しいため、生産は中止された。だが、その利便性とレトロ感あふれるエクステリアやインテリアのデザインは、現在でも魅力的だ。
中古車の新しい魅力
キューブ レトロリノベーションは、キューブを中古車としてではあるが、日産が新たな魅力を与えるという、同社の新たなビジネスモデルの試金石となるものである。 消耗部品を新品部品に交換する「リフレッシュパッケージ」と、新たな個性を加える「カスタムパッケージ」で構成される。リフレッシュパッケージだけでも、中古車のコンディションを大幅に改善する魅力的なプログラムである。 カスタムパッケージは、ボディカラーの変更、専用ステッカーや加飾パーツの装着など、さまざまなカスタマイズを選択できる。シックな2トーンのボディカラーとヴィンテージ感のあるシートカバーが、中古キューブに新たな価値を与えている。 生産終了にともない、経年劣化が進む中古キューブだが、日産の新たな取り組みは、中古車に低価格だけではない新たな価値観を与えようとしている。
東京オートサロンで評価
キューブ レトロリノベーションの販売決定は、モーターショーでのコンセプトカーの高評価に基づくもので、発表から1年以上を経て実現した。 2023年1月、日産は東京オートサロン2023に出展し、フェアレディZやセレナなどのコンセプトカーを展示した。東京オートサロンは、チューニングカーやカスタマイズカーを中心に展示するイベントで、国内最大規模を誇る。 このイベントには、当時生産終了していたキューブをカスタマイズした「キューブ リフレッシュ&レトロコンセプト」が出展されており、そのデザインは今回発売されたキューブ レトロリノベーションと同一である。日産の最新モデルのカスタマイズカーやコンセプトカーのなかで、キューブの存在は異彩を放っていた。 キューブに新たな魅力を与えたカスタマイズカーは、日産の展示車のなかでも大きな話題となり、一般ユーザーの反応もよかったようだ。しかし、当時は今後の中古車戦略の一環として発表されたものであり、キューブの復活を望む人の多くは「コンセプトだから販売されることはないだろう」と思っていたのではないだろうか。 そのコンセプトモデルがほぼそのままの形で発売されるのだから、コンセプトカーに引かれた人にとっては、実際に所有できる夢のような話である。 現時点では20台のみの限定トライアル販売だが、人気次第では今後の市販化も検討するという。奈良日産の中古車販売サイトによると、販売開始から約1か月で在庫は残り3台となっており、売れ行きは好調のようで、今後の展開が期待できそうだ。