日本刀の“幻のコレクション”が九州国立博物館に! 4月14日まで特集展示/福岡県太宰府市
平安時代の太刀から近代の礼装用短剣まで、日本刀の歴史をたどれる特集展示「日本刀の美 ―北﨑徹郎の愛刀―」が、福岡県太宰府市の九州国立博物館で開かれています。北九州市内の男性が収集したものを遺族が寄贈。同館は「非常に質の高いコレクション。じかに見て日本刀の奥深い魅力を感じてほしい」と呼びかけています。 【写真】“幻のコレクション”が並ぶ会場
平安期から近代まで
「有名な刀が多く、特に九州の刀工が手がけたものを目にできる場は貴重。寄贈して広く見られるようにしてもらえたのは、ありがたいです」。刀剣ファンという30歳代女性は、開幕初日の1月30日に会場を訪れ、一振りずつ真剣に見入っていました。 展示されているのは、平安期から近代に至るまでの刀剣31件。いずれも北九州市で医院を営んでいた北﨑徹郎さんが集めたものです。2022年に82歳で他界した後、遺族が同館に寄贈し、今回が初お披露目となりました。 「備前刀へのこだわり」「五大産地への関心」「九州刀工へのまなざし」――の3テーマに分類して展示しています。現存するものが少ない古伯耆(こほうき)の貴重な在銘作「太刀 銘貞綱」(平安時代・12世紀)や、平家の重宝で御物(皇室の所蔵品)として伝えられる名刀「小烏丸(こがらすまる)」の写し物「太刀 銘小烏丸摸/天保十四年氷心子秀世」(江戸時代・1843年)など、逸品が並びます。 保存状態もよく、訪れた太宰府市の男性(70)は「機械を使わない時代に、どうしてこんなにきれいな刃ができたのだろう」と感心していました。 会場内は撮影可能で、お気に入りを見つけてはスマホを向ける来場者の姿も見られました。
刀剣への強い”思い”
「ただ数を追うのではなく、日本刀の理解を進め、ご自身の広い視野と系統だった方針に基づいて収集されていた。当館にとって、今後の刀剣展示の根幹となるコレクションです」 展示を担当した望月規史・同館主任研究員(金工史)は、北﨑さんへ惜しみない賛辞を贈ります。 同館や遺族によると、北﨑さんは高校生の頃から日本刀を集め始め、地域医療に注力する傍ら、収集を進めました。妻・美智子さん(78)と一緒に刀の産地を訪ねるなど、作られた背景にも関心を寄せ、「バラバラにしてはいけない。(九博に)寄贈してほしい」との意向を家族に伝えていました。 「集めた後も、手入れや管理まで気を配られていたようです」と望月さん。寄贈の申し出を受けて、北﨑さんの自宅を訪ねた際、桐(きり)だんすで長さに応じて保管され、手入れの道具が備えられていたことからも、刀剣に対する北﨑さんの強い“思い”が感じられたそうです。 展示の初日、美智子さんらは、望月さんの解説を聞きながらコレクションを鑑賞。手入れのよさに話が及ぶと、美智子さんは「個室に入って3時間出てこないこともありました」と振り返り、望月さんも「ご主人にとって幸せな時間だったのでは」と応じていました。 鑑賞後、美智子さんは取材に対し、「立派に展示していただき、感謝です。こうして皆さんに見ていただき、主人もきっと喜んでいると思います」と話しました。