掘割の延伸工事などが続けられている西鉄柳川駅西口周辺

　福岡県柳川市の西鉄柳川駅前と近くの川を掘割でつなぎ、川下り舟の乗船場を設けたり、交流施設を建設したりする同駅西口周辺整備事業の完成が、当初予定より約1年半遅れの2026年秋頃に延期されることがわかった。観光振興の目玉として、市と県、西日本鉄道が19年度に着手したが、工期変更は初めて。関係者は「より安全で、訪れる人たちに歓迎される拠点としてスタートさせたい」としている。（柿本高志） 【写真】福岡県柳川市の川下り舟

　市によると、整備区域は約6400平方メートル。県が、同駅近くを流れる二ツ川から西口広場まで約110メートルを掘削して水を取り込み、観光客がどんこ舟に乗れるようにする。市は、掘割整備に伴う道路や広場の整備、西鉄は、にぎわい交流施設の企画・整備を担うことになっている。総事業費は約10億円を見込み、25年3月までの完成を目指していた。

　しかし、事業着手から間もなく、新型コロナウイルスの感染拡大や、建設の人件費と資材高騰などの影響で、交流施設整備の着手が遅れている。また、掘割が線路の近くを通ることから、安全対策を万全な状態にするため工期延長が決まった。

　市都市計画課は「掘割や道路、広場の整備はほぼ当初予定通りに進んでいるが、交流施設の整備に合わせて、乗船場の運用も延期となる。何より柳川らしい空間づくりが大切」としている。

　同駅前からの乗船については、市観光協会が各事業者に対して、一括して予約を受け付け、運航実績に応じて料金を支払うことや、各事業者が自由に乗船場を使えないことなどを説明している。北原白秋生家・記念館や柳川藩主立花邸御花などがある観光拠点・沖端地区まで運航するとしている。

　台湾から観光で訪れた30歳代女性は「（西鉄駅から）乗り場まで少し遠い。便利になったら友人にも薦められるのに（延期は）残念」と話した。

　一方、来年4月スタート予定だった川下り舟運航の延長を前向きにとらえる声も出ている。

　新型コロナの感染拡大による行動制限がなくなり、昨年から観光客数などは、コロナ前の水準に戻ったが、この間に多くの船頭が離職した。新たな乗船場の人員配置などの懸念事項について、沖端地区の飲食店経営者は「延期が決まった1年半の間は、船頭を増やしたり、乗船客からのクレームが出ないよう、研修に充てたりするなど有意義な時間にしてほしい。それにより、水郷柳川の評判もさらに高まるのではないか」と話していた。