313億円では「とても足りない」…新総合体育館 県の見積もりに業者は二の足 入札者ゼロなら見直し議論再燃か
鹿児島県が鹿児島港本港区のドルフィンポート跡地に計画する新総合体育館事業で、入札者ゼロの「不調」が懸念されている。参加を検討する事業者から、県の提示する313億円の事業費では足りず「入札は困難」との声が県関係者に寄せられているためだ。入札は27日に迫っている。 【写真】新総合体育館と新サッカースタジアム計画のこれまでの経緯を分かりやすくまとめた表
発端は、県議会9月定例会が開会した12日の塩田康一知事の提案理由説明。新体育館事業で「事業者から『労務費や資材価格の高騰が続いている』との声が上がっている」と明かした。本会議後の取材で不調の可能性を問われ、「入札日まで分からない。不調の場合は事業者に見積もりを聞くなどして対応を検討する」と否定しなかった。 ある自民県議は提案理由説明での言及を「不調に向けた布石」とみる。「心配なければ、わざわざ触れる必要がない」。18日の代表質問でも別の自民県議が「業者から数字が合わないとの声が寄せられている」と取り上げた。「見積もりと百億円開きがあると相談された」と語る県議もいる。 新体育館事業では、県が事業費削減のために民間資金を活用した社会資本整備(PFI)手法を初めて導入。設計、建設から運営、維持管理までを企業の連合体(コンソーシアム)に包括発注する。 金利上昇や施設の脱炭素化で、事業費は基本構想より68億円増えた。県は313億円には契約を結ぶ2025年3月までに見込まれる労務費や建築資材の高騰分も含まれると説明する。
ただ、事業者の反応は異なる。県外企業と数年前から入札を検討していた県内企業の社長は「何度見積もっても313億円には収まらない」と訴える。西之表市馬毛島の自衛隊基地整備や能登半島地震の復旧工事の影響で資材や労務単価が高騰。多額の赤字が見込まれ「いったん撤退することにした」と明かす。 27日の入札日には事業者が施設デザインや資金計画についての書類を提出する。以前から体育館事業に疑問を呈してきた県議は「不調となれば、規模や機能、建設場所の見直しといった議論が再燃する」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島