ZeebraとSEEDAが登場するヒップホップ専門誌『BLUEPRINT™』…責任者が明かす「創刊秘話」
国内外で話題を集める千葉雄喜の楽曲『チーム友達』が今年4月末時点で2億5000万回再生を記録したのは記憶に新しい。2月にはBAD HOPが日本のヒップホップグループとして初めて東京ドーム公演を行うなど、ヒップホップの話題に事欠かない時代になってきた。これは日本に限った話ではない。アメリカではヒップホップは国内No.1のジャンル(註1)となり、アジア各国だけでなく世界中の音楽シーンで人気を集めている。 【写真】アメリカの極悪刑務所に10年間服役した元ヤクザの「告白」 しかしながら、ヒップホップを取り巻くメディアの環境が恵まれているとは言えない。雑誌など紙媒体の衰退が著しい日本では、07年にヒップホップ専門音楽雑誌「blast」(シンコーミュージック・エンタテイメント)が廃刊して以降、長らく専門誌が存在していない。 そんな状況で、新たな動きが起きている。ラッパー・Zeebraが創刊号の表紙を飾る雑誌が5月24日(金)に創刊されたのである。その名は「BLUEPRINT THE MAGAZINE」。出版不況という言葉が常套句と化した現状で、「BLUEPRINT™」に勝算はあるのか。同プロジェクトの責任者を務めるフォトグラファーの小田駿一が、ヒップホップにフォーカスしたプロジェクトを始めた理由、そしてクリエイターを取り巻く環境について語った。
フォトグラファーとしての「ジレンマ」から
「友だちや知り合いにラッパーがいて、彼らのライブのバックステージやアーティスト写真を撮影させてもらっていたんです。雑誌を創刊するまでは、こうした写真で写真展を開こうと思っていました。ただ、写真展を開いたところで見に来てくださる方に『しっかりとヒップホップの魅力が伝わるのかな』と疑問に思ったんです」 初期衝動は、いちフォトグラファーとしてのジレンマだった。現在でも恵まれた環境で仕事をしているが、大好きなヒップホップをヒップホップとして、ラッパーをラッパーとして撮影し、作品を発表したい気持ちが強かった。 ところがヒップホップの専門誌がない現状では、ファッション誌ならファッション、ビジネス誌ならビジネスといった切り口で撮影せざるを得ない。フォトグラファーやデザイナー、ライターなど「コマーシャルクリエイター」と言われる職種には、さまざまな制約があるのだ。 「広告案件となると、多くの縛りがあるなかで撮影しなければならない。もちろん、そういう現場ばかりではなく、中には恵まれている現場もあります。ただ、多くのフォトグラファーやライターはジリ貧の状況で、まるで椅子取りゲーム。 広告費は微増なのに、制作物の数はどんどん増えているから、結果的にすべてが低単価になっている。元々、比較的自由なクリエーションができる雑誌も元気がない上に、発行部数が減っている。年を追うごとに、席がどんどん減っていて。その少ない席をみんなが争っている状況なんです」