世界の公的債務は間もなく世界のGDPに追いつく─IMFは警告も、支出拡大のトレンドが止まらない理由
IMFの警告
国際通貨基金(IMF)は10月15日、世界の公的債務の総額が今年、史上初めて100兆ドル(約1京5000兆円)を超える見通しで、今後も予想より速く増加する可能性があると発表した。 【画像】IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事 IMFの報告書によると、世界の公的債務は2024年末までに世界のGDPの93%になり、2030年までに100%に近づくという。また、成長の鈍化、資金調達条件の引き締めなどが起こる「不利なシナリオ」の場合、3年で115%に達するという試算もある。 IMFは、米国、英国、イタリア、南アフリカなど、債務が今後も増加し続けると予想される大国に対して財政引き締めを求めている。「多額の債務と信頼できる財政政策の欠如は市場に悪影響を及ぼし、将来のショックに対処する余地を狭める」からだという。
世界の流れは逆行
IMFの警告とは反対に、世界各国の政府は支出拡大に積極的になっているようだ。 「ロイター通信」によると、米大統領選挙のカマラ・ハリス候補の公約では10年間で3兆5000億ドル(約524兆円)、ドナルド・トランプ候補の公約にいたっては10年間で約7兆5000億ドル(約1100兆円)の新たな債務増加がもたらされると予想されている。 英紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、英国も新たな予算案において、財政規制のための公的債務の定義を調整し、より多くの借り入れを可能にする見通しだ。 米メディア「ブルームバーグ」は、スウェーデンも防衛費やインフラ整備のために財政黒字目標から一旦離れ、公的債務の対GDP比率の引き上げを許容して支出を拡大する方針だと報じている。 そして、従来は財政健全化を主張していた日本の石破茂首相も、2023年度を上回る規模の補正予算を組むと発表している。
国民に求められる支出
財政を規律するために、新規債務による借り入れをGDPの0.35%までに抑える「債務ブレーキ」が憲法で定められているドイツでも、インフラ整備の必要性などから債務ブレーキの見直しを求める声が少なくない。 シンクタンク「IFO」と独紙「フランクフルター・アルゲマイネ」が経済学者を対象におこなった調査では、50%が債務ブレーキの見直しに賛成している。 債務増がどれほどの問題を引き起こすか・引き起こさないかは、その国の通貨発行権の有無、その通貨の世界経済における位置づけ、成長率、金利などによって異なる。しかし共通するのは、「財政健全化」のための緊縮は自分たちのためにならないと感じる国民が、世界中で増えていることだ。
COURRiER Japon