こんな学生を採用したら一発アウト!入社後「使えない!」と言われないために面接官が見るべきこと
● 組織は分業制が前提 縁の下の力持ちになれるか? 語学にたけていたり特殊な資格を持っていたり、高い専門性のあるスキルを持っているからといって、無条件に飛びつくのは正しい採用活動とは言えません。というのも、組織である以上、分業制を前提としているので、職場内の人間関係や部署間の連携が特に重要です。 集団の中で機能できないと思われる人材は面接で見極めなければならないのです。逆に、縁の下の力持ちになってくれそうな人は魅力的に映ります。 そういう意味では、「部下や同僚として一緒に働ける人」というのが最大公約数の採用基準と言えるでしょう。いくら能力やスキルが高い人材でも、配属した途端に、現場の部署から「使えない」という声が上がることは採用責任者として避けたいところです。 「○○大学の何年入社組の採用責任者は××であると」と背番号がついて回るケースもあります。これは採用責任者にとってなかなかのプレッシャーでしょう。 面接にやってきた学生も当然、少しでもデキる人間であると思わせようと手を尽くします。いつも以上に良い人柄をアピールしょうとします。そのため人が人を評価するのは難しいわけで、まして世代の異なる初対面の相手となればなおさらでしょう。 また、最初は地味で内向的な人かと第一印象を抱いても、対話を続けているうちに、魅力的な表情が表れてきて、実は非常に思慮深く、聡明な人物であることが浮き彫りになるケースもあります。 率直に言えば、採用の時点で、人が将来どのように成長していくかを明確に見定めることはできません。そういう意味では、良い意味でも悪い意味でも採用ミスは避けられません。短時間の数回の面接では限界があるのです。その中で採用可否を決めているのが実態です。
● スティーブ・ジョブズは 採用できない 大手生命保険会社で採用担当者を務めていた頃、若手社員A君から、こう言われたことがありました。 「実家が商売をしていて、将来は自分も何か事業を立ち上げて成功したいんです」 いわく、憧れはアップル創業者のスティーブ・ジョブズで、彼はジョブズの魅力や実績についてことあるごとに熱弁をふるっていました。しかし私は、夢中になって語る彼に対して、根本的なところでの思い違いを指摘せざるを得ませんでした。 「君がもし、ジョブズのように突出した才能や個性の持ち主であれば、今のようにこの会社で毎日働くことはできないはずだ。そもそもそんな才能を持った人材であれば、おそらく私は採用していない(採用できない)し、仮に入社したとしても長くは続かないだろう」と述べました。 先述の通り、「部下や同僚として一緒に働ける人」ではないからです。また、ジョブズ自身も「こんな組織では働けない」と途中で辞退するでしょう。実際に私は似たような体験を採用責任者の時に味わったことがあります。 若手社員A君は、社内の仲間として一緒に働きたいと認められたからこそ、入社できたのであり、規格外の能力や個性があれば、採用されていなかった可能性が高い。それならば、組織内で力量を発揮できると評価されたA君の長所を伸ばした方が、いいのではないか。 「魅力ある個性や突出した能力と幸せな仕事人生との相関関係は必ずしも高くはない。ひよっとすると、あなた(A君)の方が良いポジションにいるかもしれない」と話すと、A君は複雑な表情をしていました。 才能や個性に憧れるのは素晴らしいことです。しかし、そのせいで自身のストロングポイントを見失うのは得策ではありません。現在の自分の持ち味や長所を自覚させ、さらなる成長を促すことも、人材マネジメントにおいては重要な気がするのです。 (構成/フリーライター 友清 哲)
楠木 新