<旋風・十勝からセンバツへ>第1部 出場決定までの軌跡 監督2人「共闘」思い チーム作り、時に語り合い /北海道
十勝勢初のセンバツ切符を同時に手にした白樺学園と帯広農は、同じ地区で競い合ってきたが、監督はくしくも同学年。今度は一緒に十勝へ一足早い春の訪れを届けようと、チームのレベルアップに取り組んでいる。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 戸出直樹監督(44)が率いる白樺学園の代名詞は打撃力。同校スピードスケート部監督で長野五輪金メダルの清水宏保さんらを育てた故坂井俊行さんの「グラブを打ち抜くような打撃戦になれば全員の力を生かせる」との助言から生まれた。 母校を率いて23年目で甲子園には夏3回出場。2011年には打撃力を生かし初勝利も挙げた。だが、19年は春の全道出場に続いて夏の北大会出場も6年ぶりに逃した。「何かを変えなければ」と、打撃中心から守備7割、攻撃3割にした練習が奏功。攻守のバランスがとれ、秋の全道優勝を果たした。明治神宮大会でも4強入りし、「全国での試合は選手にとって貴重な経験」と手応えをつかんだ。例年、冬は体作りが中心だが、今年は室内練習場でサインプレーの確認なども進め、「仕上がりは早く、土の上で感覚を取り戻したい」と先を見据える。 一方、帯広農の前田康晴監督(43)は就任4年目。大学卒業後の初任地が同校で野球部副部長を務めた。04年に赴任した前任の倶知安農で野球部監督になった。まず精神面を重視。「命の大切さと道具を大切にする気持ちを学んでほしい」と、学校で飼育する黒毛和種という牛の革でグラブを作製。1個約5万円だったが、選手たちはアルバイトして購入。「心の支えにしてくれた」と振り返る。 2度目の帯広農赴任で16年に監督就任。17年秋には初の全道出場を果たした。農業と学業を両立させながら、メンタルトレーニングなどの導入で少しずつ力をつけさせた。打撃上位で19年の秋季全道4強入りしたが、この冬は雪のグラウンドでライン際へのバント練習を繰り返すなど、「本来の1点ずつコツコツ点を取る野球に力を入れたい」と話す。 グラウンドを離れると温和な2人は帯広市の名物カレー店「インデアン」で顔を合わせるとチーム作りについて語り合うことも。戸出監督は「十勝全体を活性化したい」、前田監督も「十勝全体でセンバツに行く気持ちは強い」と、甲子園での“共闘”に思いをはせている。【三沢邦彦】=第1部おわり